今年度、3日に1日が休み ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/9/2号
2019/9/9
休みが多い。
今年度の休日は、完全週休2日制の会社の場合、年間129日。約3日に1日が休みである。
経営者からみると、正直いって、深刻な課題だろう。
売り上げを保つには、休日に影響されないビジネスモデルを作る必要がある。
その際に参考になるのが、「コネクテッド戦略(Connected Strategy)」だ。
Nicolai Siggelkowらが著した本で、まだ邦訳されていないので、得られる知見をかいつまんでご紹介しよう。
コネクテッド戦略とは、簡単に言えば、
お客様と一過性ではなく、定期的に関係性を持つことで、継続的な収入を狙う戦略だ。
その一例として挙げられるのが、米国で話題の食材宅配サービス「ブルーエプロン」。
定期契約を申し込むと、毎週、カットされた食材とレシピと調味料が小分けにされて送られてきて、
レストラン並みの料理が自宅で手軽に作れる。
いわゆるサブスクリプション(定額制)モデルだが、コネクテッド戦略に関しては単なる定額制にとどまらない。
そこから得た顧客データを元に、多様なサービスの提案をしていく。
コネクテッド戦略をわかりやすく実践しているのは、「WEARABLE X」というヨガウェアだ。
商品を売って終わりではなく、ウェアに埋め込んだセンサーで振動を読み取り、
今自分がするヨガのポーズが正しいかどうか、アプリでガイダンスする。
そうして継続的に取得したデータを基に、多様なビジネスを展開する可能性が広がる。
具体的には、ヨガマットなどの関連商品を提案したり、
食事提供会社や医療・健康関連機関と提携してアドバイスをしたり、広告を出したり、といった具合だ。
顧客がお金を支払うキャッシュポイントが増えていけば、継続収入モデルに発展していける。
休日が多くても、それに影響されない、安定的な収益ベースができるわけだ。
従来は継続的にサービスを提供しようとすれば、コストが飛び跳ねるように上がってしまうというジレンマがあった。
今は、人工知能(AI)などのデジタル技術を使って自動的にサービスをおこなうことで、その矛盾を解消できる。
しかし、一見、効率的なコネクテッド戦略にも盲点がある。
ライバル会社に追随されやすく、価格競争に陥りやすいのだ。
また、人間の仕事がなくなってしまう。
デジタルを用いて顧客と24時間365日コネクトしたら、社員とコネクトできなくなったという笑い話が起こりかねない。
顧客は機械によるサービス提供には、最小限のお金しか払わない。
会社が成長するためには、顧客の人生に深く関心をもち、サポートする喜びを感じる社員が必要だ。
デジタル変革を進めながら、顧客への人間的なケアを提供し続ける。
この全く違うチームを同時進行でまとめていかなければならない。
そうなると経営者・経営幹部がやるべきことは満載だ。
休みは多くなったが、責任ある立場の人は、決して休んでいない。
会社の命運をかけて、必死に頭をフル回転させている。
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