伝染する「オンライン飲み会」 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/9/16号
2019/9/23
「オンライン飲み会」が流行っている。
私の周りだけかもしれないが、強力な伝染力だ。
6月に試しに始めたら、数日もたたないうちに、参加者が別のオンライン飲み会を開催し、その後も増殖中だ。
「オンライン飲み? 何が面白いの?」という人も、一度で魅力がわかる。
まず、終電を気にすることもなければ、運転代行を頼む必要もない。
オンラインだからこそ、仲良くなりやすい点もある。
例えば、社長同士でオンライン飲み会をすると、
相手がどんな家に住み、どんな書斎で仕事をしているのかが一目瞭然になる。
海外進出が難しそうなサービスを展開している社長の机に、
大きな地球儀が置かれていたり、フランスの哲学原書が並んでいたりする。
これらを見れば、社長の人となりや関心事項が分かり、社長の自宅を訪問した後のように、親近感を抱くようになる。
また、社員や顧客とのオンライン飲み会の場合、生活の場が共有され、相手のお子さんに会えることもある。
神経をすり減らす心配も少ない。
日本の飲み会には「グラスが空いたらビールを注ぐ」、
また「女性や若者が注文をとったり、料理を取り分けたりする」慣習がある。
特に女性は“女性らしく”振る舞うのを求められるが、その必要はない。
酔っ払いにしつこく絡まれることもない。
つまらなければ、気をつかわずに、オンライン会議からプチっと退出するだけだ。
育児や介護などで外出しにくい人でも参加しやすい。
女子飲み会は、相当盛り上がる。
学生に戻ったかのように、すっぴん、パジャマで、育児談議に浸れる。
なぜ私がオンライン飲み会について熱弁しているのか。
理由は、オンライン飲み会のプラットフォームは、
次の大きなネットメディアになる可能性を秘めている、と考えているからだ。
ネットとスマホの登場で情報が爆発しているようにみえるが、実は情報源はかえって狭まっている。
気がつけば、見るのはスマホアプリのニュースと、SNSの匿名のコメントばかり。
ソーシャルメディアは何が正しいか、裏の裏を読まないとわからない状況だ。
さらに、マスメディアを通じて、他の人と同じ時間を共有することもなくなった。
しかし、オンライン飲み会をすれば、友人や情報源が広がり、他の人と時間を共有できる。
今や、同じ時間を過ごせるメディアは、まったく新しいのである。
働き方改革で一人になる時間が多くなった中、利害関係なく、構えず話し合える場は非常に重要だ。
情報も残ることなく、その場限りなので、本音が出やすくなる。
同じペットを飼っている、名字が同じ、同じ歌手のファン、といった「オンライン飲み分科会」を開催すれば、
マーケティングリサーチの場として最適だ。
何より飲み会という古典的なコミュニケーションのあり方だから、老若男女を問わず広がるに違いない。
いったい、どんな会社が、このオンライン飲み会で、マーケットシェアを押さえにかかるのか?
そんな話を、私は経営者たちとオンラインで飲みながら話している。
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