周回遅れのデジタル革命 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/11/10号
2019/11/18
12月5日、日経BP主催の経営層のための営業改善に関するセミナーで基調講演を行う。
デジタル技術を使った営業への関心は高いだろうが、それとは異なる視点で営業改革の突破口を提示したい。
なぜなら中小企業がこれからデジタルで営業変革に取り組むのは、もはや周回遅れだからだ。
補助金目当てでIT(情報技術)ツールを導入しただけでは、デジタル営業は機能しない。
本気で取り組む会社は何年も前から苦労しながらデジタルマーケティングを導入・実践している。
デジタル人材を早々と確保し、企業戦略の転換や業務の見直しもして、
ようやくアクセルを踏み込めるステージに達している。
そんな会社に何の準備もしていなかった企業が今から追いつくのは至難の業だ。
デジタルに強い人材一つとっても、この採用難のなかでの確保は簡単ではない。
導入の仕方を間違えると、今まで武器にしていた人間味や温かみのある企業文化はズタズタになる。
そもそも、平均年齢60歳の経営者がデジタル変革を始めても、若い会社のスピード感についていくのは難しいだろう。
進んでいる会社と出遅れている会社の差は想像以上に大きい。
講演では、そうした現実を踏まえたうえで、出遅れた会社でも実践できる突破口についてお話しするが、
中小企業の経営者は、出遅れを取り戻すには大胆な方法を取るしかない、と覚悟を決めた方がいい。
M&A(合併・買収)はその一つだ。
自社をデジタル変革が進んだ若い会社に売却するのである。
「うちのような会社が売れるのだろうか」と思うだろうが、チャンスはある。
米国では「ゼロベースでスタートアップを始めるより、既存事業を買い取って変革した方が成功率が高い」と
小規模な企業のM&Aが効率の良い投資として注目され始め、ベンチャー企業が社歴の長い企業を買収している。
もちろん、米国と日本とは環境が違うが、M&A専門家によれば、
日本においても小規模企業のM&Aを求める声は強くなってきているという。
オーナー企業の二代目が家業の経営資源を生かして別事業をおこなう「ベンチャー型事業承継」が注目されているが、
今後は、ファミリーを超えたM&Aが広範囲に行われるようにならなければ、
経営者の高齢化という根本的な問題に対処できない。
一方、営業のデジタル化が進む会社には、大きなチャンスが訪れている。
経済産業省によると、後継者が見つかっていないため2025年には、127万社が廃業リスクにさらされているという。
しかも近年、廃業した会社の半数が黒字というデータを見ると、127万社の中にも黒字企業が数多く含まれるだろう。
そうした廃業危機に陥る優良企業を買い取り、デジタル変革を行えば、事業を急拡大できる可能性は高い。
地域密着の企業を買収すれば、地域の大学や行政との連携も考えられる。
挑戦心あふれる会社にとって、M&Aは、宝の山だ。
補助金目当てのデジタル変革など、焼け石に水。
再編に挑む企業だけが、生き残れる激しい時代が幕開けしている。
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