超アナログ企業、華麗な脱皮 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/1/13号

2020/1/21

超アナログだった会社が、超デジタルかつグローバルに飛躍する会社に生まれ変わった――。
中古レコード販売のFTF(東京・渋谷)はその代表例だ。

中古レコード販売と聞くと、趣味人やDJを相手にしたアナログな商売というイメージを持つ人も多いだろう。
事実、同社が運営するレコード店の外観はアンティーク調で、アナログな雰囲気を醸し出している。

かつては中身もアナログだった。
創業は1994年と中古レコード店にしては新しいが、ビジネスは実店舗での販売が中心だった。

時代の変化に乗れなかったことから、
米同時多発テロや東日本大震災などの影響で、何度も廃業寸前に追い込まれたという。

そこで、武井進一社長は、経営を全面的に見直し、変革に乗り出した。
最も大きな変化が、デジタルを積極的に取り入れることだった。

まず、中古レコード店の業界では珍しかったEC(電子商取引)サイトを立ち上げた。

日本版の洋楽レコードが「状態がいい」「帯や歌詞カードがついている」と海外で人気があることに着目し、
イーベイを使って世界に向けて売り出した。

ネット上での信頼度アップも狙い、2018年にはニューヨークに実店舗も出店した。

デジタル化、グローバル化に対応できるよう、優秀な人材の確保と育成にも注力。
経営やマネジメントをもう一度学び直し、経営理念や就業規則、給与規定を再構築した。

業界標準以上の待遇を目指すことで、ES(従業員満足度)を上げようと試みた。
プライバシーマークも取得し、会社組織としての体制づくりに努めたという。

すると成果は表れ、19年に、イーベイで「グローバル・セラー・アワード」を受賞した。
米国以外に最も商品を売った会社として表彰されるまでに成長した。

今では、求人広告を出さなくても、SNSなどで告知するだけで、入社希望者が集まってくるようになった。

さらに19年4月には、業界初のレコードフリマアプリ「GO DIG」を開発した。
その特徴は、ジャケットの写真を撮るだけで簡単に出品できること。

独自の画像認証技術をアプリ内に搭載しているので、ジャケットを撮影すれば、
100万件以上の販売履歴をもとに作成した商品データベースとひもづけられる。

また、出品後、売れ残った商品は事務局に買い取り査定をしてもらえるので、二度もチャンスがあるのも魅力だ。

日本のアナログなレコード店が、世界にその名をとどろかせられたのはなぜか。
最大の要因は、武井社長が「変わらなければ」と強い意志を持ってチャレンジし続けたからだ。

実は、ECサイトを立ち上げた時、
同業者から「レコードを取り扱う人間がPCを触ってどうするんだ」と批判されたこともあったという。

しかし、そんな声に惑わされず、自らの意志を貫いたから、変革できたといえるだろう。

経営者が先頭を切って意識改革をし、チャレンジし続ければ、会社は変わる。
2020年、あなたは変われるだろうか?

 

 

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