内向き・反エリートの波 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/2/9号

2020/2/17

2020年は「反グローバル・反エリート主義」が日本で吹き荒れ始めると予想している。

香港、台湾、フランスなど世界各地でデモが起こる動きに対し、
日本は無風状態だったが、そうもいかなくなるだろう。

評論家の中野剛志氏が指摘しているように、
反グローバルは今や政治イデオロギーの一要素であり、大きな潮流になり始めている。
反エリートもそれと同期した流れだ。

11年の「ウォール街を占拠せよ」「We are the 99%」を合言葉に
米ニューヨークで起きた抗議運動からその兆しはあった。

一時的に収まったようにみえたが、16年の英国のEU離脱決定や米国のトランプ大統領選出によって、
反グローバル、自国ファーストが広がり始めた。

映像作品にも現れており、昨年大ヒットした「ジョーカー」の主題は「アンチ金持ち」。
「何かがおかしいんだよ。お前のせいなんだからな」「金持ちを殺せ」というセリフは印象的だ。

そして全世界的な反グローバル・反エリートの流れはいよいよ日本にも到達しそうだ。
話題のニュースからも、その潮流が見える。

例えば日産自動車のカルロス・ゴーン元会長の逃亡の件。
かつては日産を復活させた日本のヒーローだったので擁護の声もあるかと思いきや、
ネット上は「アンチ・ゴーン」である。

小泉進次郎氏が突然バッシングされ始めた要因も、お付き合いする女性がエリートばかりだったから。
反エリートの観点からすれば格好のスケープゴートだ。

それから「桜を見る会」問題。
ほとぼりが冷めたと思ったら今度はカジノを含む統合型リゾート(IR)疑惑。

これらはバラバラの問題に見えるが、すべて同じ動きだ。
はっきりしているのは「自分の知らないところで良い思いをしている人がいる」と考える人が多いこと。

ジョーカーのように犯人探しをしている。
これが今後も止まらないというのが私の予想だ。

これは私たちマーケッターにとって由々しき問題だ。

マーケッターは活躍するためのインフラを米アップルなどGAFAを始めとするグローバル企業に頼っている。
だからグローバル経済の価値観でキャリアを培っていかなくてはいけないからだ。

この反グローバル潮流のなかで、マーケッターはどのように自分の将来を設計するか?
自らの仕事の意義を再構築する時期に入っている。

今までグローバルなマーケッターというと、自動車部品や無印良品の文房具、アニメ関連商品といった、
海外で売れている日本の商品を効率的に売ることだけが注目されてきた。

しかしこれからは違う。

ローカル経済の伝統や文化を理解し、その良さを体現する商品を発掘して、海外に売り込む。
すなわち、外を見るだけではなく、もう一度内を見直すことが、グローバルなマーケッターといえるのではないか。

高層ビルの中ではなく、泥の中に手を突っ込むのが20年以降に活躍するマーケッターだと私は考えている。
東京五輪や大阪万博はマーケッターにとっていい仕事をする最高のチャンスだ。

 

 

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