事業実現力、学生にあり ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/2/24号
2020/3/4
新しい成長事業を生み出す重要性は誰もが同意するだろう。
では、成長事業を生み出せるのは、経験を積んだビジネスパーソンよりも
「10代の高校生・大学生」と言ったら、同意できるだろうか。
私は10代の学生こそが新成長事業を生み出す大きなポテンシャルを持つと考えている。
そう感じた出来事は、ある大学1年生との出会いだ。
私は昨年から、マーケティングコンサルタントを養成するプログラムに取り組んでいる。
有名なコンサルティング会社のコンサルタントや広告プランナーが参加する中に彼がいた。
実際に企業が抱える課題を解決する新事業をゼロから考え、提案してもらう。
その初回の課題で最も優秀だったのが、なんとその大学生だったのだ。
企業からの報酬30万円は学費に充て、親の負担を減らしたいという。
これを聞いて「企画だけなら誰でもできる」と言う人もいるだろう。
しかし、今の学生は発想だけでなく事業を形にする力も身につけている。
私は、20年以上のマーケティングコンサルの経験を元に、
デジタル時代に新規事業を開発できる、再現性のあるカリキュラムをまとめた。
実はそのカリキュラムは、今の学校教育と親和性がある。
例えば、事業ビジョンの描き方はキャリア教育と共通しているし、
内発的動機をかきたてるプロジェクトの立ち上げ方は体育祭や文化祭を企画運営する経験が物を言う。
新事業を広げるためのコピーライティングは小論文の技術が応用でき、
ビジネスモデルをロジカルに構築する手順は卒業制作に必要な論理プロセスと同じだ。
さらにビジネスモデルのプロトタイプをつくる時には必修科目化されたプログラミング的思考が効いてくる。
つまり、ビジネスを作り上げるための知識の大半は学校で習得できる。
メルカリやユーチューブなど、10代でもビジネスに挑めるプラットフォームもあり、
資金や人材はネット上で集められる。
今やビジネスは、大上段に構えて行うものではなく、クラブ活動のように気軽にするものなのだ。
高校時代に思いついた素晴らしいビジネスアイデアを、
大学で事業化して収益を学費に充てるということも十分に実現できる。
私が16歳なら、学校で探究課題を見いだした途端に会社を設立。
親に出資を要請し、その資本金を元手に学費を払いながら、事業を小規模で始めて、経験を積むだろう。
親から見れば、それは、家庭内ベンチャーキャピタルだ。
子に投資することで、早い段階から家庭へのリターンが期待できる。
この流れが当たり前になれば「子どもを育てる経済力がない」と悲観するのではなく、
「子どもの数だけ、我が家は豊かになる」と楽観的な人が再び増え、少子高齢化も改善に向かう。
ただ、その流れをつくる上で壊すべき壁がある。
それは、有名大学や企業への就職を目指すのがベストという固定観念だ。
それらを親が求めるほど、子は、創造性の芽を失う。
だから今、必要なのは、大人が余計な固定観念を取っ払うことだ。
頭の中の壁から、壊すべきである。
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