SDGs、次代のビジネス開く ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/4/6号
2020/4/13
「SDGsを企業に浸透させるには、何をすべきか?」――。
講演会で、ある経営者からこんな質問を受けた。
SDGsは2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標」だ。
環境や雇用、ジェンダー平等などに関する17の目標を世界が一丸となり、30年に達成することを目指している。
第4次産業革命にふさわしいビジネスモデルに向けて、SDGsに取り組むことは不可欠だ。
大手だけでなく、中小企業でも真摯に取り組む企業が出始めている。
個別学習塾を展開するWITS(ウィッツ、千葉県柏市)はその好例だ。
同社は近年、急速に教室数を拡大する一方で、SDGsに関するプロジェクトにも取り組んでいる。
それは生徒の成績が上がると、そのポイントを金額に換算し、カンボジアの学校の改修に寄付することだ。
100点を取ったら1ポイント。2年半で寄付額は650万円に達した。
喜多野正之社長がこの取り組みを始めたきっかけには、
8年前にカンボジアを訪れた際、以前の会社の後輩に連れられて孤児院を訪ねた経験がある。
そこには8歳~17歳の子供たちが20人ほどいたのだが
「大人になったら日本に行きたい」と日本語を勉強し、大半の子が話せるようになっていた。
それに感銘を受け、彼らと文通を始めたという。
手紙のやり取りで分かったのが、孤児院の子どもたちは将来の夢や動機がしっかりしていることだ。
ある女の子は、弟とゴミの山をあさっていたら、弟が破傷風にかかり亡くなった、という悲しい経験から
「医者になってそういう子を救いたい」という夢を持っていた。
また、親に家を追い出されたという子は、自分と同じような子を法的に支えるために弁護士を目指していた。
こうした子どもたちと関われば、日本の生徒も刺激を受けるに違いない。
そこで「私たちができることは?」と生徒たちと話し合い、行き着いたのが、ポイント寄付の取り組みだ。
寄付金による改修工事は昨年3月に完了。
州知事が開催したセレモニーに君が代のイントロが流れた時は「鳥肌が立つ思いだった」と喜多野社長は振り返る。
もっとも、同社はSDGsに取り組むために、カンボジアのプロジェクトを始めたわけではない。
「自分たちのやっていることは、まさにSDGsの目標4『質の高い教育をみんなに』だ」と認識し、
それに結びつけてカンボジアの話をし始めたら、スタッフの意欲が上がり、保護者にも口コミで広がったそうだが、
最初からSDGsを意識していたわけではなかった。
考えてみると不思議なことではない。
SDGsというと新しい概念のようだが、その実、近江商人の「三方よし」と変わらない。
日本の商人なら、当たり前のようにやっていることだ。
SDGsの文脈で表現できる活動は各社が既にしているはず。
新しい活動をするより、今までの活動をSDGsに沿って表現したほうがスムーズに進むはずだ。
その活動にこそ、第4次産業革命時代にふさわしいビジネスモデルのヒントが眠っている。
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