リモートワークで急成長する事業 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/5/18号

2020/5/25

新型コロナ下でも、ニューヨーク証券取引所で株価が急上昇している会社がある。
ファイバー(FIVERR)だ。

株価は1月末の26.09ドルから、48.81ドル(8日時点)と最高値を更新。
コロナに影響を受けないデジタルサービスとはいえ、その伸びは突出している。

理由は「ギグエコノミー」の代表銘柄だからだ。
これはネットで単発の仕事を受注する働き方や経済形態のことだ。

ファイバーは使ってみると、日本のクラウドソーシングとは別物だ。
圧倒的に取引のストレスがない。

私の会社でも6月に新規事業をローンチするにあたり、事業ネーミングとロゴデザインが必要になった。

私はネーミングの考案は得意だし、信頼できるデザイナーとのネットワークもあるが、
今回はグローバルに訴求したかったので、海外のプロフェッショナルの力を借りることにした。

ネーミングを依頼したのは、ハーバード大卒で、イスラエル在住のコピーライター。
ロゴは、イタリア在住のイタリア人デザイナーだ。

結論から言うとネーミングは1週間足らずで、ドンピシャな提案を受けた。
ロゴも3週間足らずで、期待値以上のロゴマークが完成した。

デジタルの世界では一瞬の印象がすべてだから、ネーミングとロゴマークが膨大な価値を生む。

ネーミングはキャッチフレーズやドメイン、Youtubeチャンネル名まで影響を与え、
ロゴは名刺やパンフ、ランディングページ、SNSの顔となって、ブランドイメージを高める。

これだけ複雑で重要な仕事を海外に依頼するのだから、膨大なコミュニケーションが必要だと思われるだろう。
だがそこがファイバーの秘訣だ。

まずクリエイター選びのプロセスが合理的だ。

クリエイターは松竹梅のメニューだけを提示し、提供サービスの範囲が明確に定義されている。
例えば変更依頼の回数、追加作業時の料金などだ。

言葉が通じない外国人に完成イメージを伝えられるよう、「これさえ聞けば要望を把握できる」質問も用意されている。
たとえばロゴなら「高級イメージを出したい?」「好きなコーヒー店は?」「好きな動物は?」など。

発注者側にさほど英語力がなくても、要望を伝えられるわけだ。

クリエイティブの作業工程が分析できているから、プロセスにムダがない。
進行管理も全体の何%まで完了したかが明確に分かる。
時差があれば日本の夜間に作業してくれるので、納品までの期間も短い。

その一方で、「イスラエルではコロナで検疫があり、連絡が遅れて悪かった」
「イタリアのコロナ状況を心配してくれて、ありがとう」との思いやりあるやりとりが自然と行われている。

ファイバーには全世界から発注者や仕事のプロが集まっている。
コロナ下で国の動きが止まったとしても活況だ。株価が上がるのも当然だろう。

ギグエコノミーが進むほど、問われるのは「全世界で戦えるスキルがあるか?」。
デジタルスキルがあれば、全世界を相手に仕事ができる時代になった。

世界的に自粛中だが、どの都市でも忙しい人はとことん忙しい。

 

 

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