デジタル変革で変わる企業 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/8/24号
2020/8/31
先日、私の会社の社員からうれしい報告があった。
当社が「社長の成績表」で、2315社中のトップにランキングされたのだ。
「社長の成績表」とは経営計画書の作成支援で実績のある古田土会計グループによる診断サービス。
主として財務面の指標で評価する。当社は5点満点中4.8点でダントツの1位に輝いた。
その理由は、明らかにデジタルマーケティングだ。
今の時代、デジタル変革を推進する会社は財務が好転することの証として、率直にうれしい。
実は、数年前、当社は褒められた状況ではなかった。
売上高は落ちていないものの、やりたいことにあちこち手を出し、収益性が大幅に低下していた。
そこでデジタル変革に本格的に取り組もうと2016年、アメリカに飛び
マーケティングオートメーション(MA)の大手であるマルケト社のカンフェレンスに参加。
マーケティング分野の日米の実力差に衝撃を受けた私は早速、MAを導入。
戦略や業務のデジタル化を試行錯誤しながら進め、大幅に生産性が向上した。
変革プロセスには痛みが伴った。
まず立ちはだかった壁は、デジタル技術の習得ではなく、人間的なこと。
デジタル化を推進する人材と、それを理解しないベテラン人材との間に確執が起こった。
それをきっかけにマネジメントを見直した結果、ジョブ型雇用やリモートワークが可能になり、
20代のデジタルネーティブ世代が入社し始めた。
もう一つの壁は組織体制だ。
商品別の事業部制を敷いていたがそれが壁になっていた。
商品別ではなく、マーケティングの機能別に組織を再編しないと、デジタル変革は完成しない。
理由は簡単だ。
かつて自動車の組み立ては一人の職人が全て担当していたが分業化された。
マーケティングも、技術の進化スピードに対応するには専門職が必要になってきたのだ。
具体的には「見込み客を集める」「成約率をあげる」「顧客生涯価値を高める」チームを新設。
さらにカスタマーサポートを廃止し、販売担当者が個々の顧客に対応するようにした。
「機能別に分業したら、商品ごとの収益性を細かく管理できなくなるのでは?」
「顧客からの問い合わせに対応できないのでは?」との危惧もあった。
だが実際には、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを活用すれば、ボタンひとつで経営数値が把握できる。
AIボットの導入で1人当たりの業務増も抑えられた。
何よりうれしかったのは、デジタルツールで仕事が改善するプロセスを、
社員がゲーム感覚で面白がりはじめたことだ。
正直にいうと、当社の理想から考えると5点満点中まだ2点だ。
しかしそれでも2315社中、トップになれた。
つまり、ほとんどの中小企業のデジタル変革による生産性アップは、まだこれからということだ。
コロナ禍は、何年分ものデジタル変革を数カ月で推進した。
この変革が企業財務に与える影響は圧倒的だ。
だからデジタル変革に挑む経営者の成績は、数年後に大きく向上するに違いない。
日本企業の再成長が始まることを期待したい。
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