実店舗の強み生かす ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/11/2号

2020/11/9

「コロナ明けに経済活動が正常化した時、小さな店舗を持つビジネスは強くなる」。
そう断言するのは通販コンサルタントであるルーチェの西村公児さんだ。

コロナ禍で、アナログの店舗が集客に苦しんだことから、
最近ではネット通販の方がビジネスモデルとしては強いと考えられつつある。

しかし、これからは実店舗をもっている会社が有利だというのである。

なぜか。
通信販売、典型的には化粧品や健康食品などは、顧客の流出率が極めて高いからだ。

せっかく高い広告費をかけて集めたとしても、毎月5~10%も流出するので、
1年後に残る顧客はほとんどいない。

しかし、店舗があると新規客の8割が残り、リピーター客となるのはザラだ。
それなら店舗を持つところに通販のノウハウを持ち込んだ方が会社は安定する、そう西村さんは考える。

もちろん、ただ店があればいいわけではない。
小さな店舗をどう生かし、ビジネスを強くするか。

ヒントとなるのがフラレピコーポレーションの事例だ。

同社は「お花の飾り方レシピ」を無料配信するメディアを営む一方で、生花店向け公式アプリを開発している。

アプリの目玉は「魔法の花瓶」で、これはお花のサブスクリプションサービスだ。
毎月1000円を支払うと花瓶がプレゼントされ、お花が枯れて花瓶をもって来店すると、いつでもお花をもらえる。

顧客はコロナ禍でストレスフルな日常が続く。
家のあちこちに小さなお花を置いて気持ちを和らげたい、そんなニーズを満たせるわけだ。

一方で店は、きれいなのに茎が短すぎたり折れていたりして、小さな花瓶にしか挿せないお花を売り、
顧客から定期収入が得られる。

来店頻度が上がるとついで買いも生じるし、ギフト需要も喚起できる。
双方に多くのメリットがある。

ある加盟店では「魔法の花瓶」導入後4カ月で、170人が利用。
1日あたりの来店客は60人から130人と2倍以上になり、ついで買いによる月間売上高の増加分は約60万円に及んだ。

コロナ禍でも来店客数は前年比121%を確保した。
小さなお店としては画期的なことだ。

ただ来店客数が増えた要因は、デジタルサービスだけではない。

同社は「花屋にとって重要なのは接客や対話」と強く意識し、お花の名前を教えたり、
生産者の話をしたりと、コミュニケーションはアナログのままだ。

魔法の花瓶は対話のきっかけをつくる手段だ。

社長の長田安広さんは、「店舗ビジネス成功のカギはデジタル化による人間化」と語る。
要はデジタルは、お客様と対話をする時間を増やすために使うものというわけだ。

デジタル技術が導入され始めた頃は、人間が機械に一生懸命合わせてきたが、もうそんな時代ではない。
すべてをデジタル化するのではなく、何をデジタル化して何をデジタル化しないか。その見極めが重要だ。

そのために、業界を深く理解することが大切だろう。

見極めがうまくいけば、あなたの店はデジタル化でオペレーションがシンプルに整い、
より人間的な個店経営ができるようになる。

 

 

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