米で住宅・不動産業界活況 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/11/16号

2020/11/23

米国で、コロナ禍で活況を呈した意外な業界がある。住宅・不動産業界だ。

1980年代~90年代半ばに誕生したミレニアル世代が30代となり、住宅を購入する年齢になったからだ。
ミレニアル世代は人口面で60代のベビーブーム世代を超えた。

そんな彼らがコロナ禍でとった行動で、
米国では1620年のメイフラワー号以来の人口移動が起きる、ともいわれる。

ミレニアル世代はデジタルネーティブではないが、デジタルを当たり前に使う「デジタルパイオニア」層だ。
リモートワークは何の問題もなく、望む人もいた。

だから新型コロナでリモートワーク中心の働き方になると、
都市圏を抜け出して郊外の高級住宅地に家を構えるようになったのだ。

一方、60代のベビーブーマー世代は住宅を売り、
フロリダのようなサンベルト(北緯37度以南の温暖な地域)に移動し始めた。

こうした追い風に乗り、住宅業界が活況を呈したのだ。

日本では米国のような人口ボーナスはない。
このため同じことは起こらないとみられていたが好況を示す実績があがり始めた。

「東京5LDK」がその好例だ。
ポラスグループの中央グリーン開発が開発した分譲住宅ブランドで、私もアドバイスさせてもらった。

練馬の光が丘駅から徒歩24分と決して利便性の高い地域ではないが、予想以上のペースで売れている。

好調の理由は、その時々のニーズに合わせ間取りを自由に変えられることだ。
従来3~4LDKで設計していた建物面積に5LDKを実現。

最初は3LDKで、後に5LDKにするというようにフレキシブルに間取りを変えられる。
家族の状況に応じて最適な間取りが選べる。

リモートワーク時はもう一つの部屋をワークスペースとして使えば、
子どもの泣き声を気にせずオンライン会議ができる。

実は昨年から「東京5LDK」の準備を始めていた。
住宅ローンの超低金利と将来不安から、住宅購入者の平均年齢は下がっている。

20代の新婚夫婦も、子どもが生まれると家族構成が変わる。
その時、間取りを柔軟に変えられる家が必要、と考えた。

働き方改革を機に労働時間が短縮し、自宅で過ごす余暇が増え、
趣味の個室が欲しくなるとのニーズも考慮した。

結果、東京5LDKは大きな反響が得られた。
インスタグラムで「えらくかっこいい」と数多くシェアされ、「アフターコロナを先取り」と評してくれる人も多い。

同社では、他の物件でも今までにないことが起こっている。

利便性の良い都心の物件を買おうとしていた人が、「コロナで週1~2日の通勤になり、
田舎の実家の土地に家を建て、新幹線で通う」と契約金300万円をフイにしてキャンセルする人もいたそうだ。

こうした状況を見ると、新型コロナや働き方改革により、
今や価値を生み出す場所は会社ではなく自宅へとシフトしつつあると感じる。

夫婦が自宅でリモートワークをするとなると、社会問題を解決するビジネスを家族単位で行うことも生まれる。
地域イノベーションは会社ではなく、家庭から生み出す時代になる。

 

 

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