ハリス米副大統領がもたらす変化 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/2/14号

2021/2/15

事業成長をけん引するマーケッターが、時流を読む上で注目したい出来事が、
カマラ・ハリス氏の米国副大統領就任である。

結論からいえば、ハリス氏のような人物像は、グローバル市場で自然に受け入れられるためのペルソナになった。

今はコロナ感染者数に一喜一憂しているが、社会がノーマルに戻った時、人々の関心の的になるのはやはり「人」だ。

高齢のバイデン大統領を補佐するハリス副大統領がネットとアナログ双方のメディアで注目されることは、
誰もが予想できる。

彼女の一挙一動が全世界に拡散され、グローバル市場ではファッション、生活様式、家族観、キャリア選択に至るまで、
知らず知らずのうちにハリス的価値観が浸透するだろう。

彼女のバックグラウンドを踏まえ、マーケッターが考慮すべきポイントは大きく2つある。

ひとつは、より女性に戦略をシフトすることだ。
女性の活躍はますます加速する。

ペンシルベニア大学ウォートンスクールのマウロ・ギレン教授が著した「2030」によれば、
世界の富を持つ人のうち、女性の割合は2000年の15%から、2030年には55%に上がるという。

ハリス副大統領の誕生で初の「セカンド・ジェントルマン」が生まれたが、
今後は男性が女性のキャリアを支えるため、仕事をやめることが一般化する可能性がある。

またリモートワークの定着で家庭に仕事が入り込み、ますます女性視点のニーズが増えるだろう。

そんな時代に、顧客ターゲットを女性にシフトできない企業や、経営幹部に女性がいない企業は、
急速に時代遅れとみなされ、話題にも上らなくなる。

もうひとつはアジア、アフリカへの戦略シフトだ。

アジア、アフリカは2030年に世界で最も人口が多い地域になり、世界の経済成長の主力エンジンとなるだろう。
ハリス氏が、米国初のアジア系およびアフリカ系副大統領になったことも、その一つの象徴だ。

欧米のグローバル企業は、このエリアの消費者ニーズをしっかり捉えなければならないと躍起だ。

アジア・アフリカに戦略シフトする上で不可欠なのが、ムスリム(イスラム教徒)への理解だ。

ムスリムが最も多い国は中東にはない。インドネシアでその数は2億人だ。
インドやパキスタン、バングラデシュも1億人以上。ムスリムが一番多いのはアジアなのだ。

イスラム文化は日本人にとって縁遠かったが、ネットで距離は縮まっている。

インドネシアやインドでは動画投稿サイト「ユーチューブ」が爆発的に伸び、
これを活用してイスラム文化を理解したり、ムスリムにメッセージを届けたりすることが肝要だ。

以上の話は、大企業はもちろん、小さな企業も無関係ではない。
新型コロナでリアルな世界は分断されたが、バーチャルは逆に融合が始まっている。

私が行っているライブ配信のユーザーも海外在住者が増えている。
自動翻訳で、言語の壁を越えるのも時間の問題だ。

女性副大統領の誕生で始まる未来に適合できるかが、コロナ収束後に残るか消えるかの分水領になる。

 

 

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