メンバーシップで課題解決 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/5/24号

2021/5/31

ご縁があって、米国大学の同窓会組織の理事を任されることになった。

それで気づいたのが、どの大学の同窓会組織も共通の課題に悩んでいること。
「行事の参加者が少ない」、さらには「年会費が集まらない」ということだ。

この課題はメンバーシップ・マーケティングで解決できる。
コミュニティーに属するメンバーに、組織への愛着を長くもってもらうためのマーケティングだ。

近年、ビジネスでは、一人の顧客と長く付き合うことで一人あたりの売り上げを増やす
ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)が重要視されている。
その手段として会員制度が重要になってきたことからこのマーケティングが生まれた。

メンバーシップ・マーケティングをする上で重要なのは「8つのニーズ」を調査することだ。

同窓会の参加率が低く、毎回同じメンバーしか参加しない。
参加しない理由を聞くと「忙しいから」ということだが、価値が見いだせないので参加しないだけだ。

そこで参加者ニーズを見極めるアンケートを実施したいのだが、その際に躓(つまず)くのは、
どんなニーズについて聞いたらいいか、分からないということだ。

そこで、メンバーシップに対する8つのニーズをまとめてみたので、参考にしていただきたい。

ネットワーク価値・人脈(Network) 仕事に役立つような人脈を広げたい。
社会ステータス(Status) 権威ある業界団体や学会に属することで、社会ステータスを上げたい。
特典/割引、経済性(Economy) 会に属することで商品などの割引特典を受けたり、無料でもらったりしたい。
専門的知識の獲得(Knowledge) その道の専門家に出会い、学ぶことで、専門知識を身につけたい。
広報(Promotion) 自分の商品やビジネスをメンバーに紹介し、営業につなげたい。
評価/承認(Award) 会で何かの賞を受賞することで、承認欲求を満たしたい。ハクをつけたい。
貢献(Contribution) 組織に貢献することで、充足感や名誉を得たい。
技術(Technology) 一人では入手できないようなITプラットフォームを使いたい。

以上の8つは、頭文字を取ると「Net STAKE PRO/CON」となる。
「ネット・ステイク(純利害)・プロコン」といえば覚えやすいだろう。

メンバーシップ・マーケティングが必要なのは同窓会だけに限らない。
人生100年時代を豊かに送るには、同じ趣味やビジョンを持つ人が集うコミュニティーが必要だ。

ウィズコロナの環境下では会社とのつながりが薄れ、会社以外のコミュニティーの重要性も増してくる。
そうしたコミュニティーの運営側に回ることも出てくるだろう。

その時のために、「ネット・ステイク・プロコン」を覚えておいていただきたい。

 

 

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