子供の発想をビジネスに ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/8/23号
2021/8/30
先日、外務省が後援する「第2回子ども世界平和サミット」に審査員として参加した。
衆議院の議員会館で、10歳~18歳の子供たちが世界平和をつくるアイデアを発表するイベントだ。
主催は一般社団法人ピースピースプロジェクト。宇宙飛行士の山崎直子氏を審査委員長に迎え、
11カ国202名から選ばれた15名が、日本語や英語でスピーチをおこなった。
その審査を通じて、私は確信した。
それは、子供を子供と考えずに、早期にビジネスに参画する機会を提供すべきこと。
その機会は早ければ早いほどいいということだ。
なぜなら、スピーチをした子供たちの発想力に大きな可能性を感じたからである。
彼らはスピーチの達人で、各国の大使やリーダー層など参加した大人たちの心を見事に動かしたのだが、
話し方に輪をかけて秀逸だったのは、そのアイデアの内容だ。
世界中の国々が協力してひとつの歴史教科書を作ることで、
ゆがふ(沖縄の方言で、幸せな世の中)を実現させるという18歳。
すべての人が平等な教育を受けられる教育プラットフォームを提案した16歳。
1億人から1円をスマホで集めることで世界的なスポーツ大会を開催することを考案した13歳……。
彼らのビジネスアイデアは大人と比べても遜色ないレベルだった。
いずれもSDGs(持続可能な開発目標)に触発されたアイデアだが、
荒唐無稽かと言うと、今のデジタル技術をもってすれば、難しくない。
実際、教育プラットフォームをつくるプロジェクトはすでに弊社で取り組んでいる。
子供の発想力と大人の経験が結びつくと、イノベーションが生まれるのは疑いようがない。
子供には早めにビジネスを体験してもらうべきだ。
幸い、子供が継続的にビジネスに関われる環境も整いつつある。
来年度から新たに導入される高等学校学習指導要領によって、「探究」と名がつく科目が一気に誕生するからだ。
だから「良いアイデアだったね」でとどまらず、学校教育の場で、ビジネスモデルをつくったり、
マーケティングプランを組み立てたり、さらにはビジネスコンテストに応募したり、といったことが継続的におこなえる。
さらに、無数にあるデジタルツールを活用すれば、ビジネスとして成立する可能性は十分にある。
こうしたプロセスが学校の勉強と両立できるわけだ。
企業にとっても、子供にインターンなどでビジネスを体験してもらえば、
その先に、新たな市場が見いだせるかもしれない。
ある歯科医院はその一つの例だ。
過当競争のなかで選んだのは、全年齢層ではなく、子供向けの治療にフォーカスすること。
キッズスペースを設け、歯科衛生士も丁寧に対応した。
すると思わぬことが起きた。子供のついでに、なかなか歯科治療に行けなかった母が行けるようになり、
さらには父や祖父母までその歯科に通うようになったのである。
結果、インプラントのような高価な治療も依頼されるようになったそうだ。
子供が動くと、家族全体が動くのである。
現在、政府でも「こども庁」の創設を打ち出し、子供をどう支えるか、本格議論が行われ始めている。
教育が変わり始めた今、あなたの会社では子供にどんな価値を提供できるだろうか。
そこを見つめ直せば、さらなる成長の鍵が見つかるはずだ。
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