ポジショニング戦略の最短距離 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」21/10/18号
2021/10/25
動画共有サイト「ユーチューブ」の本質とは、
人工知能(AI)によって運営されている地球規模のデジタル図書館である。
これが私の見解だ。
その本質を理解し、ユーチューブチャンネルを充実させれば、あなたは必然的にその分野のトップへと導かれることになる。
なぜなら、その特性を上手に活用して高速実験を行えば、市場ポジショニング戦略を最短距離で強化できるからだ。
私がこれに気付いたきっかけは『The YouTube Formula』という本を読んだことだ。
著者のDerral Evas氏は、グーグルに買収される前からユーチューブに関わり、事業を成長させてきた人物。
氏によると、ユーチューブが2019年度に150万人以上のチャンネル登録者数と40億回再生という結果をあげたカギは、
複数のAIのアルゴリズムにあるという。
このAIが何をしているかは、デジタル図書館に例えるとわかりやすい。
図書館の司書が本にラベルをつけるように、
ユーチューブのAIはアップロードされた動画に自動的にラベルをつけている。
そして動画の内容を緻密に正しく理解するのである。
例えば物理学のホーキング博士の動画がアップロードされたとしよう。
サムネイルに博士の顔があればAIは自動的に「ホーキング博士」とラベルをつけ、
テキストの見出しを見たら、物理学に関する話なのかなどの内容を類推する。
さらに動画のフレーム1秒1秒ごとに博士がいる場所がどこか、隣にいる人が誰かを認識。
会話も音声認識で内容を把握してラベルをつける。
このように毎日膨大にアップロードされる動画のすべてが巨大デジタル図書館で瞬時に分類・整理されているのである。
さらに、AIは視聴者とのマッチングを行う。
性別、国籍、年齢、他にどんな動画を見ているのかといった視聴者の情報から、
その人が興味を持ちそうなコンテンツを選んで提案する。
ユーチューブの視聴者数や総視聴時間が伸びている背景には、このような仕組みがあるわけだ。
このAIのラベリング機能を自社の市場ポジショニング戦略に活用しない手はないというのが、私の提案である。
具体的にはユーチューブチャンネルを開設し自らの知識や経験を共有する動画をアップする。
自分自身をこのデジタル図書館に並べると、自動的に動画がラベリングされる。
これは自社がどんな市場ポジションにいるかを明らかにしてくれるようなものだ。
もしそのポジションで視聴者が増えなければ自社の市場ポジショニングが間違っている証拠だ。
逆に視聴者が増えればポジショニングが成功していると見ていい。
「あなたは何に傑出しているのか」を探求する旅をAI図書館司書と歩めば、
その分野でカテゴリートップになる道筋が切り開かれるというわけだ。
「AIの実用化はまだ先」という経営者がいるが、すでに目の前にあなた専用のAI図書館司書がいる。
それに気づくかどうかで、今後の10年間が決まるといっても過言ではない。
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