長寿経済にビジネスチャンス ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/10/3号

2022/10/11

面白いデータを見つけた。

スタンフォード大学ビジネススクールで教鞭(きょうべん)をとるスーザン・ウィルナー・ゴールデン氏が
今年出版した洋書「Stage -Not Age」。

その中で彼女は60歳以上の人々がつくる「長寿経済」が、世界で最も急速に成長し、
最もダイナミックな市場
だと述べている。

その市場規模は22兆㌦(3000兆円超)。
日本の国内総生産(GDP)は537兆円なので、その約5.5倍にも及ぶ。
巨大なビジネスや市場機会を提供してくれる分野だ。

彼女が主張するのは、長寿経済のビジネス機会は年齢では測れないということだ。
同じ70歳でも、健康で働き続けてきた人と50歳から20年闘病し続けてきた人ではまったくニーズが異なる。

年齢ではなく人生のステージだと考えると、市場機会が見えてくるという。

日本は世界一の高齢化先進国だから、洗練された商品・サービスが提供されているように思えるだろう。
しかし、この本で紹介されている米国の商品・サービスを見ると、
「日本にあったらいいな」と思えるものが非常に多い。

日本では「年をとる=不自由になる」が思われがちだが、
米国は「年をとる=バラ色の自由が始まる」という考え方をする人も少なくない。

現実はともかく、そうした概念が、さまざまな新サービスを生み出す力になっている。
米国ではどんな商品・サービスが開発されているのか?

その1つが孤独を感じさせないコミュニティーサービス「Wider Circle」だ。
医師と連携しながら楽しいイベントを提供し、同じ趣味や興味を持つ人々をつなぐ。

それによって、孤独を感じず健康に生きられる手助けをする。
ゴールデン氏の本によると、シニアの3人に1人は孤独を感じているという。

「下り坂ではないシニアライフ」がキャッチフレーズの住宅サービス「Upside」は、
配偶者との死別や子供の独立などで広い家が必要なくなった人に、
新たなシニアライフを送るための賃貸マンションを提供している。

シニアと若い人を住宅でマッチングする「Nestely」もある。
自宅に空きスペースのあるシニアが、広い家の一部を学生に貸し出すサービスだ。
若い学生は手頃な価格の家に住む代わりに、家主のショッピングや家事を手伝う。

さらに人生100年時代は、人が健康で生きがいを持って働き続けられる環境を整える必要がある。
そんな環境を提供しているサービスの一例が「Encore.org」だ。

経験を積んだシニアと若い世代の起業家をマッチングし、
差し迫った社会問題のソリューションを次々と生み出すことに成功している。

日本ではシニア起業を選ぶ人が少ないが、米国では増えている。
起業家のうち55~64歳が占める割合は96年の約15%から、19年には25%超と一気に増加した。

長寿経済を日本でも活性化していくためには、働いている間に起業スキルを身につけ、
自らのニーズを自らのビジネスを通して満たせるようにすることが、突破口になるのではないか。

 

 

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