AI時代、営業職は不要か?――日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」7/24号
2017/7/30
あと10年で、営業職はいらなくなる。
そんな衝撃を与えたのが、オックスフォード大学・オズボーン准教授の論文「雇用の未来」だ。
コンピュータに代替されやすい職種として電話営業や訪問営業を挙げている。
営業は顧客に嫌がれることもある。
やらなくていいなら、やりたくない作業だ。
そこで効率化を進めようと、ここ2年で急速に普及したのが、
マーケティング・オートメーション(MA)だ。
MAを導入すれば、見込み客の発掘から商品情報の提供、客の選定などをコンピュータが行う。
さらに契約した顧客が商品を使い始めていないようなら、
コンピュータが顧客に「動画マニュアル」を案内。
自社から流出しないようにフォローしてくれるのだ。
このデジタル営業の技術は急速に進化していて、
今年に入ってからは人工知能(AI)を導入する会社が何社も現れ始めている。
確かにAIが獲得してきた顧客を人間が応対するだけでいいのであれば、こんな楽な話はない。
しかし、現実はどうだった?
予想通り、営業スタッフは、お払い箱になったのか?
答えは、NO。現実は真逆だった。
今、米国では電話営業も訪問営業スタッフも争奪戦。
なぜならコンピュータが発掘した見込み客の成約には
「人間」が必要なことが明らかになったからだ。
具体的に説明しよう。
あなたのサイトから、見込み客が商品関連資料をダウンロードすると、
見込み客を煩わせないように、コンピュータがメールで連絡。
その後、お役立ち情報や映像を提供したり、顧客の声を紹介したりして、
自社商品に興味を持ってもらうシナリオを組んでいたわけであるが……。
ここで、予想外の問題が発生!
見込み客はライバル会社からも資料をダウンロードしており、
真っ先に電話をかけてくる会社と商談を始めてしまうのだ。
あなたが丁寧に見込み客を育てようと時間をかけている間に、
見込み客は、あなたの存在を忘れてしまうのである。
しかもスマートフォン(スマホ)に流入する情報量が爆発しているため、
あなたのことを忘れるスピードも加速している。
昨年出版された「ザ・コンバージョン、コード」(クリス・スミス著)によれば、
資料ダウンロード後、見込み客へ30分以内に電話した場合と、
30分以降とを比較したところ、成約率に与えた差は、なんと100倍!
もちろん一企業による、限定的な状況における数字だろうが、
コンピュータに任せて一本の電話をするという人間の作業をなくしてしまう危険性は、
あまりにも大きい。
どんなに技術が進化しても、売り上げを決定する瞬間には、人と人との出会いがある。
その刹那(せつな)に問われるのは、一本の電話を厭わないかどうかだったのである。
画面の前で、スマートにこなそうとする人間は、ロボットに置き換えられるが、
顧客のために、自ら進んで汗をかいて奉仕する人間はデジタル時代に、ますます求められている。
あなたなら、どちらと付き合いたいだろうか?