生成AI 事業開発ツールに ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/8/14号

2023/8/21

生成AI(人工知能)の進化が止まらない。
Chat(チャット)GPTの新機能「コードインタープリター」は事業開発担当者にとっての強力なツールだ。

データのファイルをドラッグ&ドロップして指示すると、視覚的に理解しやすいグラフや表に整理してくれる。
統計分析も可能で、まるで成績優秀なアナリストのようである。

マーケッターにとって、自分の存在価値を見失うほどの衝撃だ。

たとえば広告を運用する場合、今までなら時間をかけてデータを分析しアドバイスしていたのが、
この機能にGoogleAnalyticsのデータを放り込めば、ものの数秒で分析や実用的なアドバイスをしてくれる。

先日も、私どもはクライアントの若手社員を敏腕マーケッターに短期養成すべく、
チャットGPTの活用ワークショップを開いた。

結果は驚嘆だった。
ある物流会社の社員は、自社の成長戦略を実行するための効果的なキーワードを選び、
見込み客をサイトに呼び込むコンテンツを作成した。

成約率を高めるA/Bテストや生涯価値を最大化するバイヤーズジャーニーを設計。
チームでPDCA(計画・実行・評価・改善)をまわすダッシュボード構築するなど、
マーケティング全般を実践的に学んだ。

わずか3カ月で自社の事業を大幅に改善し、成長軌道に乗せる戦略・戦術を作れるようになった。

医療や介護業界からの参加者も同様のスキルを習得。
大興奮し、ビジネスの面白さとマーケティングの可能性にうなっていた。

この事業開発プロセスから、
AIを使えるようになった人とAIに使われる人の差が大きく開いてきたことが見えてきた。

企業経営ではAIを使える人を養成することが重要だ。
「ハリー・ポッター」のホグワーツ魔法学校のように、AIという「魔法」を学べる場所づくりが欠かせない。

ただし、魔法を使えるようになっても物語は終わらない。
むしろ、そこから始まるといっていい。

魔法を使える社員は、周囲の社員と話が合わなくなってしまうからだ。
自分がAIを理解しても、周りはわからない。

自分と周囲の前進するスピードが全く変わってしまうのである。

そうした社員の孤立を防ぐため、企業側はAIを使える社員の援護が不可欠だ。

自分の信念に基づいて行動を進められるように勇気付け、
困難に立ち向かうための挑戦の場を用意しなければならない。

これができれば、企業のAI人材育成や事業開発は一気に進む可能性がある。

実際、ワークショップに参加した理学療法士を集めた会社は、同時に3つの事業を立ち上げ、
それぞれがAIを使って経営できるようになった。
今まで身体のケアやリハビリを専門としてきた理学療法士たちが経営人材へと成長したわけだ。

企業側は優秀な人材がAIを活用して新しい事業や仕事をつくれるように、援護できる環境を持つことが必要だ。
優秀な人材を雇っただけではダメ。
すでに人間よりもはるかに分析力や提案力に秀でるAIが、月数十ドルで雇えるようになったからである。

 
 

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