AIの幻滅期 どう備える? ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/9/11号

2023/9/18

先日、事業開発サミット(リブ・コンサルティング社主催)で、
生成AI(人工知能)に関するパネルディスカッションに参加した。

論点は「これから来ることになるAIの幻滅期を超えて、今から企業はどのように準備すべきか」だ。

幻滅期とは、新しい技術を導入した初期は大きな期待が寄せられるが、
運用するにつれ課題や限界が露呈し失望感が生じる段階である。

新技術を導入すると必ず起こると言われている。

インターネットは1990年代初頭に幻滅期があった。
未知の情報収集や新たなコミュニケーション手段として期待されたが、
低速な接続やセキュリティー不安などから失望感が生まれた。

電気自動車(EV)はちょうど幻滅期が訪れている。
環境配慮やランニングコストの低さに期待が寄せられたものの、充電インフラ不足や航続距離の制約、
高価格といった課題が浮き彫りになった。

生成AIについても、昨年末に「ここまでAIはできるのか!」「仕事がなくなるのではないか」という
恐れを伴いながら爆発的に普及し始めたものの、幻滅の声が漏れる。

医療分野では誤った診断や治療提案をすることは命に関わる問題なので容認できない。
建設分野でも、不正確な設計や構造解析による欠陥ビルの発生が懸念されている。

マーケティング分野においては適切な目的と問いを設定すれば、AI活用により企画や提案に必要な文章が素早く生成できる。
これまで分業していた多岐にわたるタスクが、1人のマーケティングマネージャーで対応可能になった。
しかしながら逆に、優秀な少人数の人材に幅広い業務が集中するという課題も生じ始めている。

もっとも、幻滅期を心配すべきではないというのが私の考えだ。

インターネットが技術革新や改善策の導入により幻滅期を乗り越えたように、
生成AIも突破口となる技術やサービスが現れている。

その1つが「AIチャットボット」である。
弊社でもナレッジコンサルティングが提供する「カイセツ」というサービスを試した。

ウェブページや社内に蓄積した営業用資料などを読み込ませると、
ものの10分で、内容に基づいた回答をAIボットが出せるようになった。
いわば、AIチューターが伴走してくれるようなものだ。

こうしたサービスを活用すれば、パソコン操作が苦手な人が一気にデジタルトランスフォーメーション(DX)環境に
アクセスでき、組織全体の学習スピードは圧倒的に高まる。

フルタイムで働けない短時間勤務の人や経験が乏しい若手も素早く戦力化できるようになるだろう。

メンバーの動機づけなど人間のマネジャーが果たす役割はあるが、
人材採用や育成に悩む中小企業ほど導入メリットが大きい。

今までDXが進まなかった企業ほど、遅れを挽回できる。

幻滅期とは主に投資家向けの言葉であり、思い通りに株価が上がらないと落胆する時期だ。
しかし実業家は歩みをとめる意味はない。

これから先行者利益が生じる挑戦期が訪れると、言い換えたほうがいい。

 
 

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