AIが引き起こす大変革 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/12/4号
2023/12/11
2023年は人工知能(AI)本格化元年と記憶されることになろう。
22年末に登場したChat(チャット)GPT3.5は、人間に近い回答を生成し、ビジネス手法の抜本的な大変革を引き起こした。
チャットGPT4.0では、画像や動画などのファイルを認識し回答するように進化した。
コンサルタントだけができると思われた高度な思考・分析作業も十分可能になった。
手書きのメモを読み解いて、内容と関連するネット情報を組み合わせて解説を加え、
アプリを作るためのソースコードもアウトプットするようになったのだ。
母国語で話すと、英語や中国語などの別の言語に翻訳するだけでなく、
その声色をコピーして自分の声そのもので自然にしゃべるAIも登場した。
国際コミュニケーションの壁がなくなる展開が現実味を帯びてきた。
23年はAI関連サービスが雨後のたけのこのように生まれた。
この流れは24年以降も止まらない。
今まで目・耳・口など頭の部分だけだったAIに、車輪や手足がつき始めたからだ。
米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は23年8月、
最新の完全自動運転ソフトウェア「V12」搭載EV(電気自動車)を自ら走行してみせた。
V12はニューラルネットワークだけで作られているので、
カメラの映像を基に道路や周囲の車に合わせて適切な自動運転ができる。
従来は「こういう状況ならこう動きなさい」と命令するソースコードによって動いていた。
テスラでは9月に人型ロボット「オプティマス」の試作機も公開した。
着色されたブロックを色ごとに正確に分け続けることができ、人が邪魔をしても関係なく作業をこなせる。
こうした流れを踏まえて、日本の経済再興の突破口としてロボティクス・アズ・ア・サービス(RaaS)を提案したい。
RaaSとはロボットのサービス化のこと。
経済産業省もロボット市場について分析リポートを出し、成長の突破口・最重要課題として考えている。
私も同意見だ。
日本は少子高齢化で労働力人口がどんどん減る。
農業、介護、医療、運輸、物流や交通と、人手が不足する業種順にロボット化するのが順当なシナリオだ。
小学校で導入している探究学習では、社会問題を解決するプロジェクトとして
ロボットのプロトタイプを作り上げることを始めている。
学習プロジェクトとしては最高のものだ。
親世代を含めた様々な世代を巻き込め、日本の製造業の強みも生かせる。
文化的にも、鉄腕アトムやドラえもんは国内外におけるブランド資産だ。
日本がロボット技術の先駆者であることを象徴している。
もちろん時間はかかるし、習得が必要なスキルも多い。多くの人々の内発的動機に火をつけるテーマだ。
大阪・関西万博を25年に開催するのもタイムリー。披露するロボット技術は日本再興の起爆剤となり得る。
機会があればRaaSというキーワードを口にしてもらいたい。
聞いた人々の目の輝きは可能性を物語ることになるだろう。
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