成果、目標設定が9割 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/1/22号
2024/1/29
2024年、経営者が成果をあげていくうえで何が重要か。
私の意見は「目標管理が9割」である。
経営者の悩みは山積している。
人工知能(AI)本格化時代に対応できる高度人材の採用は難しい。
働き方の多様化で、時短勤務や副業する社員が増えた。
本業に集中する時間が削られている。
日常ではSNSが注意力や集中力を奪う。
複雑な状況下で成果を出すための要諦が、シンプルなKPI(主要業績評価指標)の設定だ。
KPIの設定は非常に難しい。
一般的には「組織全体の戦略や長期目標と一貫させる」
「目標達成に向けた進捗状況を具体的に測定できる」などと言われる。
ただ、現実離れした指標を設定する経営者は少なくない。
KPIが社員のやる気をそぎ、チームがバラバラになっていく。
「チームを機能させるためのKPI」との観点から、逆算して考えることが重要だ。
着目すべきは、組織を動かす資質を持った「モビライザー」社員である。
モビライザーは未来を示す「ティーチャー」、変化に対して懐疑を示し安定を守ろうとする「スケプティクス」、
実務を重視する「ゴーゲッター」の3タイプがいる。
研究では3人が一致して同じ方向に動くと組織は変化を起こせるという。
つまり、3人が納得する数値をKPIに掲げれば、チームは一丸となって動けるのだ。
そんなKPIを設定するにはまず、3人がそれぞれやる気になる内容を考える。
たとえば、集客イベントを開催するとしよう。
ティーチャーは「未来へのインパクト」にワクワクするので、
LINEやホワイトペーパーなどのリード(見込み客)を集めるための無料媒体の実行数をKPIにすることを好む。
スケプティクスは「読める数字」が大好物だ。
イベントは単発でなくシリーズ化し、毎回数字を確保できるとうれしい。
流出率を減らすためのNPS(ネットプロモータースコア)などが適している。
ゴールゲッターは現実を重視する。目の前のイベントで何人集まるかに関心が高い。
成約率が向いている。
同じ方向を目指せるKPIを考えるのである。
例えば「イベントをシリーズ化し、全シリーズの延べ参加者数」と設定すれば3人のニーズを満たせる。
あとはKPIをどう達成するかだ。
ゲームにするのが良いだろう。
チームを機能させることが重要なので、30人の部署なら30人全体で達成するのではなく、
5人ほどに分けたチーム単位で達成するほうがいい。
モビライザーを意識して社内を動かすことは、実は顧客を集めることにも効果的だ。
顧客にも、モビライザーと同様に、可能性(影響力)、実績、安定にベネフィットを感じる3タイプがある。
社内がまとまる数値を追いかけひとつの方向に動き出すと、顧客もまとまって集まってくるのだ。
複雑な状況下でも会社の成長を実現するには、全員が勝利できる環境を作り出すことが重要だ。
具体的にはビジネスをゲームのように捉え、プレーヤーそれぞれが得意とする数値をクリアすることだろう。
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