才能の見つけ方 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/2/5号
2024/2/12
とても面白い本を読んだのでご推薦したい。
「世界一やさしい『才能』の見つけ方」という本だ。
知ったきっかけは、ある大手グローバル企業で社内読書会を開催したこと。
経営戦略やイノベーションなどの本が候補にあがったものの、
統括リーダーが「年初なので、具体的かつ実用的な本がいい」と本書を選んだ。
本音をあかせば、私は「才能の探し方」というコンセプトは眉唾だった。
なぜなら、個人の才能はチームで仕事する体験を通じてはじめて際立つものだからだ。
どんなに個人で自分の秀でているところを見いだそうとしても、かえって迷路に迷い込んでしまうケースを多数見てきた。
しかし、本書をめくりはじめると、私の不安と誤解は瞬時に払拭された。
本書の才能の定義が極めて秀逸で、目からうろこだったからだ。
才能は「人よりうまくできること」ではない。
「つい、やってしまうこと」だというのである。
私が「つい、やってしまうこと」は未来について深く考えることだ。
未来に向かうトレンドを予測し、乗り込むためのビジネスを構想することである。
つまり、このコラム「未来にモテるマーケティング」について考えるのが、まさに「つい、やってしまうこと」である。
この才能は必ずしも私にとって受け入れやすいことではない。
私は文章表現することよりも、
経営者としてチームを率いて世の中に意義のあるビジネスに熱意をもって取り組みたいからである。
本書によれば「なりたい自分になろうとする」のは典型的な間違い。
むしろ「なりたい自分を手放すと才能が見つかる」という。
私の場合はチームを率いる自分を手放すことで、才能が見つかるというわけだ。
読者のあなたも「つい、やってしまうこと」を考えてみるとよいだろう。
この才能の見つけ方はチームメンバーの才能を見つけて、チームを機能させることにも役立つ。
メンバーが「つい、やっていること」をしっかりと観察すれば、メンバーが無自覚な才能を次々と見つけることができる。
その意図をもって1on1をすれば、メンバーは予想外の才能を指摘してもらえるので1on1が楽しみになるだろう。
才能の見つけ方は、コラムの主題であるマーケティングと関係ないように思えるかもしれない。
しかし今のマーケティング活動は顧客のニーズを理解し、エンドツーエンドで効果的に提供することが求められる。
しかも今や顧客との感情的なコネクションを築くことがブランドの成功に欠かせない。
実現するにはチーム全体が一人一人の才能を見出し、互いにリスペクトし、
共通のビジョンに向かって一丸となることが必要だ。
才能の発見と活用は、マーケティングチームを機能させるうえで非常に重要だ。
「つい、やってしまうこと」を観察すれば、周囲のメンバーの才能についても手っ取り早く見出し、
リスペクトし合えるチームをつくれる。
社内でこの本の読書会を1回するだけで、組織がポジティブに変わり始めるだろう。
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