ふるさと納税、メルカリ並み ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/2/19号

2024/2/26

ふるさと納税の規模を知り驚いた。

2022年度の受け入れ金額は9654億円。
開始15年ほどで、総流通額9846億円のメルカリ並みの流通チャネルが国内に生まれたことになる。

急成長していながら、私はノーマークだった。
ふるさと納税の返礼品は牛肉や干物、果物など地域の特産品が対象。他業種には関係ないと思っていたからだ。

大きな勘違いに気づかせてくれたのが小学館コロコロオンラインの副編集長・小林浩一氏である。
「コロコロコミック×ふるさと納税」と銘打ち、ふるさと納税の概念を覆す返礼品を次々と企画している。

「秘密基地のような球体型テントに泊まって自然を満喫できる」
「町工場で溶接をして自分だけのコロコログッズを作れる」
「湘南モノレールの一日駅長になれる」などのユニークなイベントの参加権だ。

ふるさと納税市場は2兆円に伸びるという予想もあるが、
このプロジェクトを見ると、確かに大きな潜在力があることを確信した。

小林氏が手がけたふるさと納税の返礼品企画には、重要なマーケティングのヒントがあると私は考える。

というのは、子供を対象とした返礼品を成立させるのは実に難易度が高い。
子供はふるさと納税を知らないので、自分が関われるイベントがそこにあると想像できないからだ。
大人も返礼品にバケーション体験があるとは思わない。

このように商品の価値を受け取る人(この場合子供)と、購入決定を下す人(大人)の間に大きな隔たりがある場合、
どうやって彼らを一つの共通体験に巻き込んでいけばいいのか?

小林氏に尋ねると、返礼品の企画プロセスは非常に緻密。
まるで家族一人一人の心を読みとり描写する小説家のような思考だった。

子供がコロコロコミックをめくるところから始まる。
漫画の情報を「コロコロオンライン」のYouTubeチャンネルで見ると、ふるさと納税返礼品の動画が流れる。
子供たちは仕組みを初めて知る。

親は今年の返礼品について話し合っている。
その時、子供が「こんなのを見つけたよ」と発言する。
こうして親子の間にコミュニケーションが生まれ、共通体験に巻き込まれる。

小林氏のアプローチは、ふるさと納税を活用して、家族間の対話を促進し、
共に楽しめる体験をデザインすることで、新しいビジネスチャンスを創造する可能性を秘めている。

さらに企画の面白いところは、自らの仕事を地域の子どもに知ってほしい人が現れたり、
学校の先生が探究学習の時間のなかで返礼品を考える授業をしたり、と派生することだ。

アイデアを基にした返礼品が実現されれば、それは単なる返礼品以上の意味を持つ。

子供たちに地元に対する関心を持たせ、仕事について考えるきっかけを提供する
地方創生の新たなモデルになるのではないか。

バラバラの価値観で動いている異なる世代が、共通する未来の体験へ合流する。
どんな準備が必要でどんな対話から始めれば良いか。小林氏のように緻密に想像することから始めてみたい。

 
 

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