生成AIと私、説得力は互角 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/4/1号
2024/4/8
あなたは広告メッセージを人工知能(AI)と人間が説明した時、どちらの効果が高いと思われるだろうか。
その答えを私自身がテスト・検証したので、結果を共有しよう。
「AI神田」と「リアル神田」を使って販促効果を比べるテストだ。
AI神田とは、私の約1分のリアル動画をAIに読み込ませることで、私の声色や表情の動きを再現したアバター動画。
リアル神田は、私が同じテキストを話して収録した動画である。
それを私の著作の読者を中心とするハウスリストへと送信。
次のステップの動画に遷移するクリックスルー率、平均視聴率や講演会への参加率を比較した。
私はベテランの講演者で、聴衆をエンゲージした実績を積んできた。当然リアル神田の圧勝だと思っていた。
ところが、結果はショッキングなものだった。
まずクリックスルー率の結果は「明確な勝者はいない」。数値の差は0.1ポイント以下だった。
今度は動画の平均視聴率を比べた。最後まで集中して動画を見た人がどの程度いるかだ。
教育学の研究では、人間の声の方が圧倒的に学習浸透度は高い。だから、当然リアル神田のほうが高いと考えた。
しかし、結果は惨敗。AI神田が十数ポイント上回った。
さらに落ち込むのは、私はリアル神田の映像を仕上げるまで、10回ほど取り直した。
それに比べ、AI神田はテキストをちょっとPCで修正すれば完了。
さらに英語・中国語・ロシア語・スペイン語などに瞬時に変換し、私の声色で話す。
これが意味するのは「働き方は完全に変わる」ことだ。
努力しても反応が低いのなら、人間は邪魔しないほうがいい。
実験結果から、2025年には営業完全自動化に踏み切る企業が出始めると思うようになった。
そんな世の中で人間にできることは何か。
私は次の2つと考える。
「誰が言うのか?」「何を言うのか?」だ。
「誰が言うのか?」は、マーケティングメッセージの発信者が誰か。
人々は、なじみがあり親近感を感じられる象徴的「アイコン」が発信するメッセージに強く引きつけられる。
AIを使って微細な調整も可能だが、元のアイコンを生み出すのは人間の役目だ。
「何を言うのか?」は中核的なメッセージ。つまりマーケティング施策の心臓部のアイデアである。
ノイズがあふれるなかで注目を集めるには、見慣れた提案や既存のアイデアではなく
予期せぬ視点を提供することが非常に重要だ。
顧客の痛みを理解し、深い思いやりを持てるかが問われる。
25年に向けてAIと人間は協働し、AIがデータ分析とルーティンワークを担い、
人間は創造的なタスクと戦略的な決定に専念するようになる。
AIは究極にパーソナライズされた体験を顧客に提供できるようになる。
AIとデータを駆使した新ビジネスモデルが登場し、商品やサービスの提供方法は大きく変わる。
マーケティングも新しい未来が広がるだろう。
問題なのは、過去の仕事のやり方にしがみつくことだ。
今こそマーケッターは、捨てる勇気が必要だ。
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