新商品の価値 どう伝える ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/8/19号

2024/8/26

最近「Go-to-Market(GTM)戦略」が米国のビジネス界で広まりを見せている。

一言で訳すとしたら「市場参入戦略」。
新しい商品やサービスを市場に導入する際に最大限の収益を生み出すためのアプローチを指す。

ターゲット市場の特定、製品のポジショニング、販売チャネルの選定、価格戦略の設定、販促計画などを含む。

「従来のマーケティング戦略と何が違うの? なぜ新しい言葉が必要になったの?」と思うかもしれないが、
背景には、デジタルマーケティングの普及により、
新商品をローンチする際にマーケティングとセールスの連携がより重要視されるようになったことがある。

さらに新たな顧客ニーズや急速な技術進化に応じて、タイムリーに商品の機能を改良・変更しなければならない。
そうした企業全体での一貫したアプローチが不可欠になったことから、GTM戦略がクローズアップされるようになった。

Doug Davidoff氏の「ザ・レベニュー・アクセラレーション・フレームワーク」(未邦訳)によると、
GTM戦略は最初に以下の5つの質問に答えることが基本となる。

①ビジネスモデルは何か、それをどう最大限に活用できるか
②誰にとってのヒーローになりたいか
③価値提案はどう際立ち、顧客に共鳴し、競合他社と差別化されるか
④選定した市場でどのように自社をポジショニングし、ターゲット市場に響く適切なメッセージを伝えるか
⑤どのようにして利益を上げながら顧客と収益を獲得し、維持するか――だ。

私はこの質問をみてハッとした。
まさにコピーライティングと同じだからだ。

5つの質問を繰り返せばビジネスモデルや顧客のニーズが明確になり、
顧客にフィットしたマーケティングメッセージを書けるようになる。

言い換えれば、GTM戦略に言葉ありき。
戦略を実行するには、必ず言葉が必要条件になる。

例えばマネーフォワードが家計簿アプリの利用促進のために展開した「お金の見える化。」キャンペーン。
タニタがヘルスケア製品だけでなく健康的な食生活を提案するブランドとしての認知度向上を狙った
「タニタ食堂」キャンペーン。

こうしたコピーはマーケティング戦略に一本の筋を通し、多くの消費者の関心を引くことに成功した。

このように中核的な商品価値を言語化し、
まだ満たされていない顧客ニーズにピンポイントで当てることで、GTM戦略が整うのである。

GTM戦略は経験を要する、レベルが高い仕事だが、理解するにはコピーライティングが良いトレーニングになる。

どんな部署に勤めていても、文章を書こうとすると顧客の理解や調査が必須だ。
5つの質問を考えると顧客について深く考えるようになり、顧客との接点を重視するようになる。

文章が苦手でも生成AIを活用すれば、ある程度ぼやっとしたイメージも言語化できる。

マーケティング戦略は進化しているが、顧客に対して深く考える必要性は以前からブレずに変わらない。
それどころか技術の進化とともに重要性は増している。

 

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