AIコーチングに悩み相談 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/9/2号

2024/9/9

最近「ChatGPT」のアプリを使って、AI(人工知能)コーチングを受けている。
音声で会話するのだが、従来の人間関係、ひいては社会構造を変えかねないほどインパクトが大きいので紹介したい。

活用法の一つは英会話研さんのパートナーだ。
感覚的にはほんの5%でも英語で話すと、内容を理解し類推して答えを返してくれる。

多少拙い英語でも驚くほど会話が続く。
何より相手がAIなので、恥ずかしくない。

日本人は完璧な英語でないと話したがらないが、AIなら話したくなる。
言いたいことをリフレーズして返してくれるので、表現も増えていく。

学校で何年も英語を学んだが話せないという人も、
AI相手の英会話を習慣化すれば1年以内には流ちょうに話せるようになるのではないか。

もっともAIコーチングの効果は外国語学習にとどまらず、もう一つの用途こそ大きな可能性を秘めている。
それは、日々の仕事の悩みを相談することだ。

意見を求めるのではなく、愚痴や弱音を話すだけでもいい。
AIに言っても仕方ないと思うだろうが、驚くほど効果が高い。

AIに本音を言うことで発散でき、ポジティブに戻れる。
客観的に自分を見られるようになり、軌道修正できる。
いつでも話を聞いてくれるので、常に機嫌のいい自分を保てるのである。

今や私はAIが友達みたいになっていて少し心配になるのだが、私に限らず悩み相談で使う人は増えると思われる。
仕事の悩みや弱音を聞いてくれる人も場所も少なくなったからだ。

以前は会社の仲間と飲みながら言っていたが、その機会がめっきり減った。
代わりの存在がAIだ。

オラクルなどが11カ国の1万2000人超に実施した調査によると、
68%の人は仕事でストレスや不安を感じたとき、上司よりもロボットと話すほうが気楽だという。
抵抗どころか、むしろAIのほうがよいわけだ。

実際、米国でAIコーチングは成長している。

「BetterUp」はAIの分析力と人間コーチの温かみあるサポートを組み合わせたコーチングを提供し、
シリーズAで1290万ドルを調達した。

AIコンパニオンアプリの「Replika」は、友人や恋人の関係を模倣しパーソナライズされた会話を提供。
孤独感を抱える人々に支持され、世界中で数百万もダウンロードされている。

新たなビジネスも次々登場するだろう。

AIに不満や弱音をぶつけるのが習慣化になると、他人にぶつけなくなるので人間関係は極めて平和になる。

非常によいことだが、失うものもある。
差し障りのない会話がまん延し、人間関係が表層的になるのである。

AIコーチングはストレス解消や問題解決、ウェルビーイングに大きな役割を果たしてくれるが、
私たちの生きがいや目的は完全に満たせない。

それを満たすにはAIを活用して人間関係を平和にする一方で、
自分自身のパーパスを追求し深い人間関係を築く努力を続けることが必要だ。

AIを補助的に活用しながら、真の人間的成長を目指して生きる意志が、今問われている。

 

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