10年後の主役「パープルカラー」 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」25/2/24号

2025/3/3

立春も過ぎ、2025年が本格的に始動した。

今年は巳(み)年。蛇の頭が動き出せば、その勢いは尾の先まで波及する。
つまり、今年始めたことが、この先10年の成果につながる年だと考えている。

このような年は過去にもあった。

例えば1997-98年。楽天(現楽天グループ)やサイバーエージェントが創業し、
当時は「ネット技術を活用したショッピングモールや広告代理店」という認識に過ぎなかったが、
10年後の2008年には、日本のデジタル経済をけん引する存在へと成長した。

同様に、12年もトレンドの起点となった年である。
この年にはSNSが成長期に突入した。

フェイスブックやツイッターにより、個が発信する時代が到来した。
それがユーチューブへと発展し、共感をベースにしたネットワーク社会を形成した。

そして25年、主役は人工知能(AI)だ。

22年に対話型AO「Chat(チャット)GPT」が登場し市場を席巻したが、これはほんの幕開けに過ぎない。
今後、AIは社会の至るところに浸透していく。

しかし、その主戦場はコンピューターの中にはない。
ChatGPTやClaudeなどの「頭のAI」はいずれコモディティー化し、インターネットのように日常の一部となる。

社会を変革するのは「手足のAI」、つまりリアルAIだ。
AIが現実世界で直接的に働きかける技術を指す。

完全自動運転車やドローン配送、介護・医療用ロボット、
さらには工場や建設現場で活躍するAI搭載の機械などが、その代表例である。

これらの技術は労働力不足や高齢化といった社会的課題を解決し、AIの影響を現実世界で体感できるものとなる。
このリアルAIは物理的な労働の補助だけでなく、安全性や効率性の向上にも貢献する。

リアルAIの進化に伴い、新たに求められるのが「パープルカラー」と呼ばれる人材だ。
彼らは単なる作業者ではない。

現場で手を動かしながら、AIやロボットを活用して効率を最大化し、課題解決に挑む。
技術の進化に適応し、異なる分野の知識を組み合わせて独自の解決策を生み出す力を持つ。
チームと連携しながら新たな価値を生み出す。

彼らは、AI時代の産業変革をけん引する存在なのだ。

パープルカラーの人材として、私は理学療法士や作業療法士、電気工事士、配管技能士を挙げる。

現場での実務経験と高度な技能を持つ彼らはAIによるデータ分析やロボット技術を活用することで、
より効率的な働き方を実現できる。

こうしたスキルセットを持つ人材は現場から離れた博士号を持つ研究者よりも実務的な価値を発揮し、
安定したキャリアを築く可能性が高い。

25年はリアルAIが社会変革の鍵を握る年。
パープルカラー人材がその最前線に立ち、技術と現場をつなぐ架け橋となる。

そして、この流れは、今後10年でさらに加速し、
2035年にはパープルカラー人材が企業や社会の中核を担う存在となるだろう。



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