仕事や目標の渋滞 どう防ぐ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」26/1/19号
2026/1/26
東京大学の西成活裕教授による「渋滞学」の研究によれば、渋滞の先頭には何もない。
原因は、気づかないほどの緩やかな上り坂だ。
ドライバーが無意識にスピードを落とし、後続車が車間を詰める。
そして車間という「間」が消えた瞬間、流れは止まる。
実は、この現象は私たちの仕事でも起きている。
年初に意欲的な目標を掲げたはずなのに、数週間後には日常に埋もれてしまう。
その理由は「間の消失」にある。
クラウド、Zoom、人工知能(AI)など効率化ツールは増え続けた。
しかし、ますます忙しくなっているというパラドックスが起こっている。
メール返信を自動化すれば30分浮くが、その時間に仕事が入る。会議を短縮すれば、もう1本会議が入る。
効率化した分だけ仕事が増える構造だ。
米国の研究によれば、TODOリストに載せたタスクの41%は永遠に達成されない。
達成されたTODOの50%は1日以内、18%は1時間以内に完了するものだ。
すぐ片付く小さなタスクばかりが消化され、年初に掲げた重要な目標は永遠に「いつか」のまま残る。
問題は時間が足りないことではない。
出来事と出来事のあいだにある「間」が消えていることだ。
「間」がなければ、仕事は渋滞する。渋滞すれば、前に進まない。
そして前に進まないから、ストレスが生まれる。
私が主宰する経営者コミュニティーでは7年間、毎週月曜日の朝活を継続している。
メンバーは1年間、10倍目標を追い続け相互に応援し合う。
なぜ続くのか理由を考えてみたら、振り返りのための余白の時間、
すなわち「間」を週1回あらかじめ設計することが最も効果的だった。
多くの人が犯す過ちは休憩時間にスマホを見ることだ。
しかしスマホは休憩ではなく新たな刺激で、脳はむしろ疲労する。
ミシガン大学のカプラン夫妻による「注意回復理論」は、自然環境が脳の注意力を回復させることを示している。
スタンフォード大学の研究では、自然の中を90分歩いたグループと都会を歩いたグループを比較。
自然の中を歩いた人だけが、反すう思考に関わる脳の領域の活動が低下し集中力が回復した。
脳を真に休めるには、デジタルから離れ自然に触れること。
そして、その「間」を使って、次の重要な出来事へ向かうための振り返りと準備をおこなうことが大切だ。
忙しい人が「間」を確保するには「間」を先にデザインするといい、週単位で未来から逆算する。
1週間後の理想の状態を描き、そこから現在を見る。
すると今週の予定のつながりが見え、最重要ポイントが浮かび上がる。
そしてそこに向けた「間」を先に確保する。
AIが加速する時代、効率よく処理する能力だけでは価値を生まない。
求められるのは、発想し、つなげ、意味を生み出す力だ。
そのためにも、「間」は不可欠になる。
年初の目標を達成するために必要なのは、より多くの時間でも、より強い意志でもない。
重要なことに向き合う「間」を先に確保することだ。
それが2026年を変える第一歩になる。




