Z世代のニーズどうつかむ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」26/3/2号
2026/3/9
企業には今、10~20代のZ世代向けキャンペーンで明確な打ち手が見えづらくなっている。
2025年のあるマーケティング調査によると、
Z世代の61%が「大人が考えたZ世代向け広告」に興ざめし、38%が即座に離脱すると回答した。
なぜ、こうなるのか。
会議室にはZ世代がおらず、旧世代のベテラン幹部のみで決めて、企画し、選ぶ。
Z世代は、その構造を見抜いている。
ところが、この問題を意外な組織が突破し始めている。
それは企業ではなく、行政だった。
東京都北区では「ROSÉ(ロゼ)」という若手職員チームを結成している。
Z世代を含む入庁4~10年目の若手職員が各部局から集まり、区独自の政策を研究・実践するためのチームだ。
先月、そのROSÉが「次世代の挑戦を育てるモデル都市構想」の中間発表を行った。
彼らが最初にしたのは、問いを変えることだった。
「若者は何を求めているか?」ではなく、
「10年後、北区は次世代の挑戦を育てるモデル都市として世界から注目されている――。
その未来をつくるために、今、何が必要か?」と問いを180度変えた。
そして、自ら生のデータを取ることにした。
区民まつりや花見の場で直接対話を重ねて、数百件のリアルなデータを集めた。
人工知能(AI)でクラスター分析を行い、データをストーリーに変えるために、演技を使った。
数字が〝自分ごと〞に変わった。
プレゼン本番、若手職員たちはこう提案した。
「若者は『つながれる場』を求めています」
「本当に場がないのか? 知られていないだけか? 一歩踏み出せないだけか?」
と先輩職員からの鋭い問いに対し、彼らは答えた。
「全てです。共通しているのは『きっかけ』が欠けていることです。
場を知るきっかけ。一歩を踏み出すきっかけ。集まるきっかけ」
質疑応答を通じて、会場の皆が気づいた。「きっかけ」とは0→1の瞬間のこと。
まだ動いていない人に、最初の一歩を提供する。それが、若手職員たちが見つけた答えだった。
若手職員たちは「動かされる側」から「未来をつくる側」へと変わった。
企業も同じことができる。
次回のマーケティング会議で試してほしいことがある。
まずZ世代の社員を会議に呼ぶこと。
そして問いを変えることだ。
「今のZ世代は何を求めているか?」ではなく
「5年後、我が社は次世代の挑戦を育てる企業として注目されている――。そのために今、何が必要か?」。
その問いを彼らと一緒に考える。
ただし、彼らに答えさせてはいけない。一緒に未来を描く。そうすれば見えてくる。
Z世代が求めているのは商品やサービスではない。「きっかけ」だということだ。
Z世代を消費者と考える前に、まずは設計者として起用する。
その転換が、次の時代を開く。
北区の若手職員による最終発表は今年末だ。
その時、彼らは若者向け施策を提案するだけではない。
「北区の未来」の設計者として立っているだろう。
同様に、私たち企業は次世代にきっかけを提供しているだろうか?




