日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」6/26掲載記事公開!
2017/7/3
世界に挑戦するのが、未来にモテる会社の条件だ。
「うちは中小企業だから、世界なんてムリ」という言い訳は、
美容室「TICK―TOCK」を知ったとたんに、色褪(あ)せる。
この美容室は、神戸・姫路に4店舗を構えるのみ。
だが、国内外800社と契約し、特許技術を提供。
またニューヨークにスタジオを構え、日本発の優れた美容技術を、世界に向けて発信している。
その技術を、一言で説明すれば「小顔になるカット法」だ。
「髪を切るだけで、顔が小さくなるなんて…」と首をかしげる人もいるかもしれない。
だが、東洋人の平たんな頭の骨格を補正するようにカットすると、髪の量感が立体的になり、
その結果、小顔に見えるのだ。
この美容技術「ステップボーンカット」を開発したのが
「TICK―TOCK」オーナーのSAYURIさん。
彼女の世界を目指す挑戦は2010年に始まった。
まずは、著書「FOR JAPANESE HAIR DRESSERS 日本の美容師たちへ」を発刊。
ステップボーンカットを写真で紹介しながら「日本の美容技術は世界最高水準だと自負しなさい」と。
日本の美容師を励ます内容だが日本語に加え、
英語とフランス語版も用意し、世界6カ国13都市で売った。
その上で、ステップボーンカットの技法を体系的に学べるスクールを開いた。
現役の美容師でも学べるよう、短期集中で受講できる。
コースによっては、講師の資格も取れる仕組みだ。
その結果、日本だけでなく、インドネシアやシンガポール、台湾など、アジア各地のサロンから、
「東洋人に合ったステップボーンカットを学びたい」という美容師が日本のスクールへ。
ここで学んだ美容師たちは本国で技術を披露し、
講師資格を取った美容師が本国で他の美容師を育てていくことで、
ステップボーンカットの評判が広がっていったのだ。
16年には、世界最大規模の美容ショー
「インターナショナル・ビューティー・ショー・ニューヨーク」からオファーされ、
カットのデモンストレーションなどを実施。
その上、ニューヨークに構えたスタジオで、技術を教えるスクールを開くと、
ますます、その名が広まっていった。
ちなみに、ステップボーンカットをするには、専用のはさみやローションが必要なので、
カット技術を学んだ美容師たちは、継続的に商品を購入することになる。
TICK―TOCKは、スクール事業の収入だけでなく、
物販による継続収入までを収益源とする、優れたプラットフォーム型のビジネスモデルなのだ。
このようなカット技法に限らず、
日本には、世界的に見てもプレミアムな技術や商品がまだあるはずだ。
TICK―TOCKのように、緻密なビジネスモデルをつくればマネタイズが可能になるが、
それには、まず、中小企業でも臆せず世界に発信していくことが第一だ。
グローバル化が進んだ今、世界との距離を縮められるかは、
挑戦する気があなたに、あるかどうか。
会社の規模の違いじゃない。