採用難時代の人材育成 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」12/3号

2018/12/11

「大和麺学校」をご存じだろうか?

ラーメンやうどん、そば店を開業するノウハウを1週間で教える短期集中講座を展開している学校だ。
2001年に開校し、今や卒業生は4872人。
海外からも受講生が訪れているほどの人気である。

この学校を単なる技術学校と思うことなかれ。
実は人材採用難の時代に、会社を急成長させるヒントに満ちあふれている。

想像してみていただきたい。
あなたの会社で新規事業の立ち上げを任せられる人材を1週間で育成できたなら――。

それに匹敵するぐらいの教育を、大和麺学校では行っている。

その秘密は、「デジタルデータの活用」にある。

再現性を高めるために、麺の素材の配合、スープの味、具材の仕込みなどを0.1グラム単位で計測し、
データ化しているが、同校のデータベースにあるのはそれだけではない。

地域ごとの好みや、だしの濃淡の違い、飲食店案内サイトの評価や立地、坪数、家賃、座席数から見た売り上げデータ、
インスタグラムに投稿してもらうための美しい盛り付けなど、さまざまなデータを持っている。

これらのデータを駆使し、繁盛する麺店をつくるノウハウを1週間で叩きこむ。

要は商品戦略、マーケティング戦略、店舗戦略、地域戦略のすべてをデータで管理。
PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルをまわしながら改善を繰り返す人材を育成する。

しかも、同じような店や料理をつくるコピー人材を育てるのではない。
「なぜ麺店を開くのか?」という生き方自体を問いながら、
生徒一人ひとりがオリジナルの一杯を1週間で作れるように導くのである。

開業ノウハウというよりも、デジタル時代の人材育成ノウハウといってもいい。

これは、職人の技術を要する、あらゆるビジネスに応用できるのではないか。

例えば美容室なら、髪質分析や髪質にあったシャンプーの選択、平均接客時間やメニュー、
駅からのアクセス時間、口コミサイトのレビュー数などが、顧客満足度や友人紹介率に影響する。

税理士なら財務分析から始まり、対応すべき重点項目、従業員満足と顧客満足と売上高との関連性。
データを活用して経営する方法を、きちんと教える。

今は自分の専門分野を超えた多様な分野のデジタルデータが集めやすくなっているので、
その活用法を伝えれば、結果を出せる人材を次々と生み出せるはずだ。

そこで気づくのは、今までの社員教育は社会人や職人としての基礎を身につけるという、
ほんの表面をかすったものでしかなかったということだ。

優秀な人材の採用が困難になった今、やっとの思いで採れた人材を確実に育てることの重要性は増している。

正答することを目的とする詰め込み型教育ではなく、
「仕事を通じてどう自分の人生を表現していくか」という創造性を高める教育が鍵となる。

ただ、そうした教育カリキュラムを持っている会社は少ない。

あなたが作れば、その教育カリキュラムが業界標準となり、業界の未来を作り上げることになるのだ。



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