「OKR」知っていますか? ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/2/4号

2019/2/12

昨年10月に出版された『メジャー・ホワット・マターズ』(ジョン・ドーア著)が素晴らしい。
翻訳すると「重要な数値を計測せよ」という意味だ。

過去10年に書かれた本で「会社業績を最も上げられる一冊を手渡せ」と命ぜられたら、
私は躊躇(ちゅうちょ)なくこの本を差し出すだろう。

グーグル、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブック、ウーバー、ツイッター、アドビ――。
驚異的な成長を遂げた米国発の世界的企業は「OKR」と呼ぶマネジメント手法を採用している。

OKRは目標(Objectives)と主要な結果(Key Results)の頭文字を取った言葉だ。
一言で言えば、「企業や個人が協力して目標を設定・達成するための手順」のことだ。

それによれば、目標は、重要で具体的で、行動を促し、人々を鼓舞するもの。

そして主要な結果とは、目標を「どのように」達成しつつあるかを測定する基準で、
具体的で測定・検証可能でなければならないという。

シンプルながら、その結果には驚かされる。

たとえばユーチューブは、「4年間で、ユーザー1日あたりの総視聴時間を10億時間に増やす」との壮大なOKRを掲げ、
期限前に達成した。

ゲイツ財団は「2040年まで世界からマラリアを撲滅する」との野心的な目標を掲げ、
達成に向けて、多くの企業との連携を実現している。

導入の手間も少ない。
本を一通り読めば、翌日から採り入れられるほどだ。

導入のポイントは2つ。

1つは、OKRの設定頻度は1年ではなく、4半期ごとか1カ月ごとにすることだ。
もう1つは、目標と報酬を連動させないことだ。

なぜなら、報酬と連動すると、誰も高い目標を設定するリスクを取らないからだ。
グーグルでは各期のOKRが終わると、そのデータを完全に削除してしまうほど徹底している。

私の会社でも実験したところ、半年後には、社員の数値への向き合い方が変わった。

OKR導入により、計画の達成が、ゲームのスコアを競い合うような楽しみに変わり、
縦割り組織の弊害も解消されはじめている。

グーグル創業者のラリー・ペイジ氏は、本の序文で
「OKRは、僕らが10倍成長を遂げ、それを何度も繰り返すうえで重要な役割を果たしてきた」と語る。

また「優れたアイデアが完璧に実行されたとき、はじめて魔法が起こる。だからOKRが必要なのだ」とも。

OKRで魔法を起こせるのは、グーグルやアマゾンなどの最先端企業だけではない。
日本の成熟企業でも可能だ。

日本企業の多くは、毎年少しずつ成長する「年輪経営」を標榜してきた。
それによって優れた企業文化や人材が育ったが、半面、新規事業を生み出す勢いは小さい。

OKRはそんな停滞した状況を打破する武器になる。
さらにデジタル技術を組み合わせれば、再び新しい成長を作り出すことは可能だ。

OKRによって、日本企業が、どんな魔法を起こせるか。私は楽しみでならない。

 

 

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