ユーチューブ世代の「レビュー」 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/4/14号
2019/4/22
19歳のインターンに、マーケッターとして働いてもらっている。
高校を卒業したばかりだが、驚くほどレベルが高い。
動画編集ソフトからマーケティングオートメーションまで、教えなくても勝手に身につけてしまう。
話を聞くと、ユーチューブを見て育ってきた結果、動画編集などを自分で普通にこなしてきたという。
彼らのようなユーチューブで育った世代にしてみれば、動画コミュニケーションが日常なのだ。
そうしたユーチューブ世代に人気の「Qoo10(キューテン)」という総合EC(電子商取引)モールサイトがある。
元は別の会社が運営していたが、昨年、米ネットオークション大手イーベイが買収し、日本事業を展開している。
モール内で商品を買うと、商品が配送されたかどうかの確認メールが送られてくる。
その際に、レビューを書くとポイントがつくのだが、
注目すべきなのは、レビューを動画で投稿するのが、もはやスタンダードだということだ。
「イメージ動画を追加する」という選択肢から動画をアップするまでの流れが、極めてスムーズに設計されている。
「自分の顔を出して、商品のレビューをするなんて、抵抗がある人が多いのでは?」と思うかもしれないが、
実際のところ、この世代の顧客は、カメラに向かって話すことにまったく抵抗がない。
当初は「なるほど、レビューを動画で投稿するという選択肢を提供するとは、いいアイデアだなぁ」と軽く考えていた。
だが、これはマーケティングにおいては大変革である。
試しにQoo10とユーチューブで検索すると、膨大な数の動画がアップされているのが分かる。
アパレルや化粧品といった商品の購入体験や使用体験など、ほとんどは購入者によるレビューだ。
今では、ユーチューブが初めて会社や商品を知る、主要な接点になっている。
だから、売り手がウェブサイトや広告で発信する情報より、買い手が友人や将来の買い手に向かって、
自主的に発信する情報のほうが、商品を広めるうえで圧倒的に重要なのは明らかだ。
なかでも、効果的なレビューは、商品使用前と使用後で、顧客が変身する瞬間を捉えた映像。
最も分かりやすいのは化粧品で、メーク前とメーク後を動画で見られれば、一目瞭然だ。
それは綿密に設計された広告ではなく、顧客が自ら発信した映像のほうが、真実味があり、効果的である。
となると、今後、eコマースの成功の鍵は、受取確認メールなどの、顧客とのタッチポイントで、
いかに顧客からレビューをいただく機会を確実に得られるかどうかになってくる。
顧客はあなたの会社の商品をきっかけに自己表現する機会を探っており、
その機会をスムーズに提供できたとき、あなたの会社の商品の魅力を自社に代わって伝えてもらえる、
ブランドパートナー、そしてマーケッターとして育っていく。
「マーケッターは、社内ではなく、むしろ社外にいる」。
そう考えるくらいのほうが、令和時代は、ビジネス進化のスピードに乗り込めるのではないか?
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