プログラミングの必修化 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/7/22号
2019/7/29
Hello, world!(ハロー、ワールド!)――。
この文字列が来年からすべての小学生の目に触れることになるかもしれない。
2020年度から、プログラミング教育が、小学校で必修になるからだ。
「ハローワールド」とは、プログラミングを勉強するとき、世界中の誰もがはじめにコンピューターに指示する内容だ。
例えば、印刷を指示するなら「print(“Hello, world”)」などと書くわけだが、
この教育改革がもたらすインパクトを、皆さんは想像できるだろうか?
単純にウェブサイトが作れる子どもたちが増えるということではない。
ハローワールドという、文字通り「世界を創りだす」子どもたちが生まれるということだ。
かつてプログラミングには、「何らかのコンピュータープログラムを動かす」「ウェブサイトをデザインする」
というイメージしかなかったが、今やそれだけにとどまらない。
インターネット環境どころか、社会の中で人と人とがどのように交流するかという実社会の人間の行動を変える。
そんなサービスを生み出すのに不可欠な技術となった。
実社会の人間の行動を変えた例は、枚挙にいとまがない。
米民泊大手エアビーアンドビーは、世界の「宿泊」に関する行動を一変させ、
ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズは「移動」という行動を変えてしまった。
共通するのは、プログラミングにより生み出された場に人が集まり、
人と人との出会いによって、24時間365日、価値の交換がなされていることだ。
人が集えば集うほど多くの価値が交換されるようになり、場の魅力は高まる。
そして、気付けば社会のインフラに発展し、世の中全体を変えてしまったわけだ。
プログラミングができれば「できたらいいな」を空想し、
それができる仕組みを現実にでき、このような仕組みをたった一人で創り出せる。
プログラミング教育の必修化とは、プログラマーの卵を次々と育てることに他ならない。
卵どころか子供の頃から「社会の課題解決に、どのように社会の動きを変えるプログラムをつくればよいか」
を考える人も出てくるだろう。
すると、彼らの手でこれまでなかった価値交換の仕組みが生み出されるに違いない。
例えば、介護を提供する人とされたい人をつなぐ。
あるいは健康だが犬の散歩やちょっとした配達をお願いしたい高齢者と、
健康維持のためにそれらの仕事を手伝う高齢者をつなぐ……など。
こうした仕組みが軌道に乗れば、老老介護をはじめとした少子高齢化の問題を解決できる可能性がある。
とてつもなく大きな社会事業になっていく可能性すら秘めているのだ。
ビル・ゲイツ氏は「優秀なプログラマーとそうでない人の価値は1万倍ぐらい違う」と述べている。
それぐらい1人のプログラマーが持つ力は大きい。
プログラミング教育の必修化に、私は大きく期待している。
同時に、若いプログラマーをサポートするには大人は何をすべきかを考え続けている。
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