「営業」化するコンサル ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」19/8/5号
2019/8/12
今や、誰もがコンサルタントになりたがる時代。
新卒就活サイトを運営するワンキャリア(東京・渋谷)が東大・京大の就活生を対象に実施した
人気就職先ランキングでは、トップ10の7社までを一流コンサルティング企業が占める。
また定年後のセカンドキャリアに、今までの経験が生かせるコンサルタントを選ぶ人も大勢いる。
単発のスポットコンサルティングを一括で見積もりできるサイトでは100社以上の選択肢がそろい、
百花繚乱(りょうらん)の状況だ。
誰もがコンサルタントになったら、監督ばかりで現場のプレーヤーがいなくなり、日本経済は由々しき状況に陥るのでは?
そう思うかもしれないが、憂う必要はない。
なぜなら、コンサルタントは、以前の「営業職」の役割を担っていくと考えるからだ。
2015年の国勢調査によると、営業職の人口は00年の468万人をピークに毎年減り、15年には331万人に減った。
デジタル化が進み、営業職が今までほど要らなくなった状況はあるだろうが、
それ以上に営業がコンサルに代替され始めていると考えられないだろうか。
例えば、システムコンサルタントはシステム導入を支援する「営業」であり、
人事コンサルタントは人材派遣・紹介をする「営業」だ。
マーケティングコンサルタントは、
クラウド上でソフトウエアを提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)などの営業という具合だ。
彼らはコンサルという自覚を持ち活躍している。
コンサルタントは、経営トップに戦略を指南し、企業を変革に導く参謀というイメージがあるが、
いまやそれは戦略コンサルティングという一部の分野にすぎない。
求められるのは、専門性・分析力だけではなく、
複雑化した組織に、効果的な解決策を導入する意思決定を促す営業力なのだ。
コンサルタントが「自らは営業」と考えることは、悪い話ではない。
コンサルタントとして生涯、キャリアアップし続けるためには、
分析力でも、問題解決力でも、プレゼンテーション力でもなく、やはり営業力が必要だからだ。
実際、戦略コンサルティング会社を見ても、パートナーと呼ばれる上級コンサルタントの仕事は、仕事をとってくることだ。
今後、働き方改革が進み、副業解禁の流れが加速するので、ますますコンサルタントがあふれる。
その際、長く活躍できる者とそうでない者を分ける条件とは何か。
高度な分析力や提案力に満足することなく、自らを「高度な営業」と自覚し、研さんを積むことだ。
日本は高齢化社会に向かう課題が山積みの課題先進国だから、
今後、課題を解決する社会性の高いビジネスが多数生まれるだろう。
新しいコンサルタントは、日本から生み出される新しい成長モデルを世界に広げる上でも、強力な援軍となる。
こう考えれば、いまのコンサルタント人気は、日本の未来にとって必要な職業を本能的につかみ取っているともいえる。
つぶしが効く仕事は営業だといわれていたが、いまやコンサルタントになったのだ。
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