前書き公開[1] 「買収起業」完全マニュアル ベンチャー立上げリスクを回避する「新・起業法」
2021/6/10
● あなたは「リッチ」か、それとも「キング」か?
ベンチャーの創業者には、2つのタイプがある。
ハーバードビジネススクールのノーム・ワッサーマン教授によれば、「リッチ」と「キング」だ。
リッチとは、外部から資本を調達し、自らの経営コントロールは手放し、富の最大化を目指すタイプ。
上場を目指すベンチャー経営者は、リッチである。
キングとは、富の最大化よりも、自らの事業に対する経営コントロールを維持し続けるタイプ。
地域や分野の雄を目指すオーナー経営者は、キングである。
今、あなたがベンチャーを創業するとしたら、リッチvsキングの、どちらを目指すだろうか?
もし、あなたが「富もコントロールも、どちらも欲しい」という野心家なら、本書の翻訳を待った甲斐がある。
なぜなら本書は、まさに、その第3の道 ― 「買収起業家」になるために必要な全プロセスを公開する、
稀有な実務書であるからだ。
買収起業は、リッチとキングの「良いとこ取り」戦略となる。
具体的には、0から事業を立ち上げるのではなく、既存事業を買収して再成長させる。
そうすることで、スタートアップが直面するリスクを大きく回避しつつ、
すでに稼動している事業インフラを改革して、再び成長軌道にスピーディに乗せていく。
その成功率は、0からのスタートアップが10%以下に対して、買収起業は98%+(P67 図2.1)。
さらに年間ROI(投資収益率)は100%を超える(P60-P61参照)。
もちろん、そのリターンは、既存事業が「いくらで買収できるのか?」が鍵になるが、
業界によって異なるものの、
「だいたいオーナーの手元にはいる年間キャッシュフローの3-4倍に落ち着く」と著者は解説する。
この米国のシミュレーションは、日本に当てはまるのか?
もし当てはまるなら、これは、大チャンスを掘り当てたことになる。
しかも、日本経済の大いなる救済になる。
なぜなら中小企業の約半数が後継者未定であり、2025年には廃業が急増すると予測されているからだ。
そこで早速、私は、日頃よりお付き合いさせていただいている、
後継者採用支援や承継M&Aに取り組む松橋社長に電話した。
本書の概要をざっと話しした後、間髪入れずに、直球で尋ねた。
神田「社長、この本の内容って、日本に当てはまるんですか?」
松橋「・・・はい。長い話の結論だけお伝えすると、だいたい日本も同じように当てはまります」
神田「・・・だいたいと言うと? 当てはまらないところもあるのですか?」
松橋「はい。実は、政府が発表した第三者承継支援総合パッケージにあるように、
事業承継補助金などの支援がでてきており、日本の中小M&Aがさらに活発化すると言ってもいいと思います。」
その答えを聞くや否や、私は早速、出版社に連絡。
「多くの企業を救済する書がある」と、邦訳書の刊行を熱く説得した。
以来、翻訳作業は約1年におよぶことになったが ―― デジタル変革により企業を再成長軌道に乗せることが急務の今、
まさにタイムリーな出版となった。
読者が経営者・起業家、またはコンサルタントのいずれであっても、
新たな(しかも大きな)収益機会を見出すことになるだろう。