子どもとお母さんが元気になると金沢がイキイキします。女性を支える仕事 「2022講演会」ご参加者インタビュー
2017/5/12
神田昌典の金沢「2022講演会」にご参加の高井佑讃史(しんじ)社長。
女性のために金沢全体の保育園を支える事業が生まれたお話を伺います。
女性のために金沢全体の子育てをサポートする。
保育のやりがいと71歳の保育士さんのお話を伺いました。
― 女性の支援が保育士さんの派遣事業となったのは?
社会から必要とされる仕事をしなければならない。女性の支援をしたいと考えましたが、女性の支援にもいろいろあるので、まずは飛び込み営業のように聞いて回りました。
まずは女性にどういうことに困っているかを聞いたのです。すると答えは「子育てがたいへん」というものでした。
そうか、子育てを支援したら女性の支援になるのか……と、今度は子育て支援についていろんなところへ聞きに行きました。そして、子育て支援の中では保育園、幼稚園が大事な場所だということがだんだん分かってきました。
そして、ある保育園さんに「困っていることはないですか?」と聞いたところ、「人がいないから連れてきて」と言われたのです。
それなら「女性を支援する」という私たちが掲げた旗印を、間接的ではあるけれど後押しできるのではないか。「じゃあ保育士の人を探して連れてきます」と答えて、そこから1人ずつ保育士を保育園に派遣するようになりました。
ですから、私たちの会社は人材派遣が目的の会社ではなく、派遣のビジネスモデルを使って女性の支援をすることが目的の会社なのです。そして女性の支援の方法は子育てを支援すること。子育て支援の中でも大事な保育園という拠点を安定・安心して運営してもらうために人材を発掘し、送り出す事業です。
保育園を支援することで子育て支援ができて、その結果、女性の支援ができる。自社にできることが人材派遣という形でした。
― 保育園の先生はたいへんというイメージがあります
保育園の勤務はたいへんです。勤務時間は長く、雇う側の園としてはフルタイムで朝から晩まで入れるスタッフに来て欲しい。反面、働きたい保育士さんは出産後の復帰や子育て中で時間に制約がある。そこで私たちが行っているのはワークシェアです。保育園の中の勤務体制を組み合わせて運営ができるようにサポートしています。
5年前に、保育しかやらない、とそれ以外の派遣を全部止めたのです。今思うと、とても勇気がいる決断でした。
ですが、リーマンショック後、時の審判に耐えられなかった。あの時に社員がやめ、派遣が打ち切られ、手足をもがれて「おまえらの会社なんて社会に必要が無い」と強烈に突きつけられたと感じています。そこで、自分たちが信じる道で突き抜けてみようと決めました。
これまでは自分の知り合いに紹介できない会社だったと思います。それが、ようやく社会と会社がつながった。派遣している保育士さんに「保育士として活躍できるよ」と自信を持って言えるようになりました。
ここ数年、私たちの会社に登録された保育士さんは、圧倒的に口コミ・紹介が多いです。派遣の保育士さんから知り合いの紹介を受けたり、派遣先の園の保育士さんと話題にしてもらって、正職員の保育士さんが退職される時に登録してくださいます。
今も「女性の活躍」と言われても追い風だとは思わず、まだまだニーズを満たせていない不足感が常にあります。保育士として戻ってきてくれる女性の掘り起しをしているところです。
そして、女性の活躍というトレンドが無くなってもやることは変わりません。今は人材不足が強く出ていますが、将来、子どもの数が減ったら、次は求められることが「質」に変わってきます。保育士もプロフェッショナルとして専門性や様々なスキルを上げていくことが必要です。
幼児教育は本当に大切なことです。幼児期に大人とどういう関わりが出来ているかが、その子どもの人生や人格形成に影響します。保育士はまさにそこに触れる仕事です。
保育士の姿勢は子どもの根っこの部分に影響します。また保護者から保育士に求められるものも時代と共に変わりつつあります。保育士が地域のつながりや保護者との関わりの中で、保護者の求める価値に応えなければならないことも増えました。そのため専門知識や時代の流れを知らないといけない。
神田さんの「2022講演会」で紹介された「2人の法則」。まさに正規職員の保育士1人にかかる負担が強すぎる状態です。2人でシェアすれば意外といけます。業務ももっとシンプルに出来ます。
保育は「子守り」や「お世話」ではないのです。皆、子守りだと思っているのですが、その間違った保育観を捨ててもらいたいです。保育には「次にどうするか」の想像力が必要です。保育士同士が二人で「この子、どうしたいのかな?」と想像して話し合うような、そんなクリエイティブな部分があり、そこには「2人の法則」が生かせます。
― 保育士さん側の事情はどうですか?
保育士の役割は大事です。そして、女性の保育士は自分自身が母親であることも。
保育園も、園によっては厳しい労働環境だったりするので、そういう園には助言とサポートをしながら、少しでもいい環境を作っています。
自分でも保育士の資格を取りましたが、保育は素晴らしい仕事だと感じています。
子どもの成長のかたまりの時期に関われるのです。伸びるしかない塊と一緒に過ごせるのは、どの仕事にもない達成感と喜びがあります。
子どもが昨日できなかったことを今日できるようになる。その瞬間を見ることができる。
こんないい仕事、他には無いです。
また実際に、保育園の子どもが巣立って、小学校に行って、そして小学校を卒業する。すると「先生、卒業したよ」と園に報告に来るんですよ。中学校を卒業したよ、高校を卒業したよ、結婚したよ、子どもが出来たよ・・・と、その子が来てくれます。
長い保育園は30年、40年と運営しているので、幼児期の子どもの人生を三世代まで関われる。そんな仕事って、他に無いのではないでしょうか。
長い時間軸で仕事ができる。そして、自分が提供した保育がどうなったか、相手の方から訪ねて来てくれるのです。
もちろん、現状は保育現場の待遇が悪いという課題もあります。ただ、高い給与が欲しいだけだったら、誰も保育士にはなりたがりません。それを超えるやりがいや喜びがこの仕事にはあります。
また、人の相性があるので、優れた保育士であっても、園のある担当の人とだけ合わないこともあります。他の園に紹介すると「なんでこんないい人を隠してたん、高井さん?」と言われるくらいです。人の相性があるので、夢と希望をもって保育士になった人に、その園がすべてとは思って欲しくないのです。
保育士になって、自分の出産やいろいろな理由があって辞めてしまった人たちに、1人でも多く保育園に戻ってもらい充実感や喜びを味わって欲しいです。そして、子どもたちにとっても、たくさんの中から選ばれた優秀な保育士に出会って欲しい。
― 母親向けのコーチングもされているのですね
母親は、子育てで自己肯定感を下げてしまうことがあります。毎日めちゃくちゃしんどいのに誰からも褒められない仕事だからです。そして、幼少期の母親の関わり方が、子どもに強烈に影響を与えます。お母さんがイキイキしないと子どももイキイキしない。
そこで、子どもとどう関わったらいいか分からない女性向けにマザー向けコーチングも紹介しています。
今の保育の現場は、子どもの自立を支援しています。昔はお世話をする保育が主流でしたが、今は、大人が手を出したくなるのを我慢して、子ども本人がさも自分でやったかのようにします(笑)。子どもの「個」を見る、自立がキーワードです。
女性には結婚や出産といった、そこに集中しないといけないタイミングがあります。その時に働く時間が短くなる事情の人をパズルのように組み合わせる。
そして、保育士さんの方も、ある瞬間からフルタイム勤務しないといけない経済情勢がやってくる。お子さんが中学生になった頃です。すると正職員として戻ってきます。
保育園としてはオペレーションが負担ですが、自分のことを大切にケアしてもらった保育士は、またその園に帰りたくなる。
一つの園で多くのパート保育士を持ち続けるのは難しい。また、偶然、出産が相次ぎ保育士の育休が集中する園もあるのです。各園の調整をすることで全体のバランスを取って、その期間の体制を作っていきます。金沢の保育園さん全体を見るとそれができます。
実際、私たちの会社の最高齢の派遣保育士は71歳なのです。
保育士は人生経験がその人の保育スキルになります。例えば、子育てや介護をした経験があれば、その経験とともに共感力が上がっています。
保護者のお母さんに「子どもさんが熱を出して、たいへんやね」という一言があると、お母さんが「分かってくれた」と涙ぐまれる場面があります。
ですから、保育士の一時期の賃金は低いかもしれないですが、生涯賃金では勝てるのではないかと思います。年を重ねると共感力がふくらみ、71歳まで現役が続けられる。保育園からは年齢が高いほど安定して勤務してくれると期待される。お母さん達から相談される機会が増える。かなり息の長い専門職です。
子どもとお母さんが元気になると金沢がイキイキします。
元気な母親のもとで育つ子どもは元気。自己肯定感が高く、愛されている、必要とされていると感じるほどチャレンジしていけます。そして逆境に強い子どもになります。そんな子どもが増えると金沢が、地域が元気になる。
そのための黒子となって下支えしたい。私たちは女性がいきいきと活躍する社会の実現ために、女性を社会へ戻す支援を今後も積極的に取り組んでいきます。
インタビューの内容はいかがだったでしょうか?
金沢在住・関西出身の高井社長。笑いをまじえながら、女性を支える事業について熱く語ってくださいました。
人生経験が保育の糧となり、共感力になる。そんな71歳の保育士さんが活躍される保育園。
金沢の女性と子どもたちがイキイキと過ごされる未来がイメージできました。
素敵なメッセージ、ありがとうございました。
インタビュー・構成 清水裕美子