リモートワークのススメ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/3/23号
2020/3/30
新型コロナウイルスの感染拡大が報道され始めたころ、私の会社ではすぐにリモートワークに移行した。
既に半年前から実験を始めており、リモートに切り替えられない仕事は全業務の2%。
反対する社員もおらず、すんなり移行できた。
うまくいったのは「リモートファースト」(Constance Watkins著)という本を読んだからだ。
「効率的だし楽しい」と在宅勤務するニューヨークのクリエーターが、
より楽しいリモートワークの仕方について取り組んだ内容だ。
そのポイントを取り入れたのだ。
まず取り組んだのは、本人の働き方に任せるという創造的な文化を一部、制限することだ。
具体的には午後9時から午前9時はチャット禁止にした。
従来は中小企業の社長やフリーランサーと仕事をすることが多かったので、
夜中や週末にひっきりなしにやりとりしていたが、社内でも同じように働くとストレスがたまるスタッフがいるからだ。
働ける時間は減ったが、仕事はスムーズに運び、時間管理もしやすくなった。
次に取り入れたのは、チャットが解禁される午前9時に、全社員が、その日の気分を絵文字でアップすることだ。
大した作業ではないが、こうしてネット上であいさつを交わすと、
スタッフたちの忙しさや感情の変化が手に取るようにわかる。
加えて、その日にフォーカスすべき仕事を一つだけ入力してもらえば、
会社が向かっている方向と、スタッフたちが注力している方向が一致しているのかもわかる。
これだけでも日々の全社員の仕事ぶりが十分に把握できる。
もう一つ実施したのは、オンライン会議ではカメラをオンにしてもらうこと。
自分の顔や家を見せたくない人もいるが、久しく会っていないと、相手の顔が見えた方が、安心感がある。
すると、犬や猫を飼っている社員は必ずそのペットを抱いて見せたり、
子供が入り込んできたり(ちなみに子供は、オンライン会議が大好きだ)、とプライベートが見えるようになった。
子供の成長がわかり「大きくなったね」などという会話が生まれ始めた。
こうして完全リモートにしたら、面白いことが起きた。
社員同士の距離感が縮まり、関係が良好になったのである。
ネガティブな話はなく、悪口を言う人もいない。
思わぬ副産物が生まれたといえるだろう。
こう言うと「リモートワークができる業界ならいいけど、
病院や建設、サービス業など、できない業界には関係ない」という人がいるかもしれない。
しかしリモートワーク以外にも、
建設機械による自動運転化、ドローンによる宅配、遠隔診療など導入可能なテクノロジーは数多くある。
コロナに関係なく、将来の労働力の低下が避けられない今、
IT(情報技術)で補える領域は積極的にIT化することが不可欠だ。
後々振り返ってみれば、日本では遅々として進まなかった第四次産業革命が、
感染症によって口火を切られたことが思い起こされるようになるだろう。
その流れに乗り、自ら新しい変化に飛び込んで正解だったと思う日は必ず訪れる。
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