営業生産性、コロナで急上昇 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/8/10号
2020/8/17
「コロナ不況」という言葉を使う前に、この話を聞いていただきたい。
先日、ある通信系ベンチャーを支援してオンラインセミナーを開催したが、その数値に目を疑った。
約500社が参加し、うちアンケート回収107社、商品の仮申し込み68社、代理店希望32社。
仮申し込みとはいえ、クロージング比率が65%。不況どころか、特需としか思えない数値だ。
多くの会社がやむなく始めたオンライン営業だが、実はメリットは大きい。
オフラインと比べ、非常に営業効率が良いのだ。体感値で生産性は3倍上がる。
「生産性が上がるのはデジタル変革が進んだ一部企業だけでは?」というかもしれないが、
日常の仕事のやり方を少し変えるだけで大きな成果が期待できる。
デジタル変革というと大変そうに聞こえるが、
実は、今までの「変革」ほど構えなくてよく、難しいことはない。
例えばオンラインセミナーを使った営業は次のようにやればいい。
はじめにメールマガジンやSNSなどで「招待」する。オンラインセミナーの設定は簡単でほんの30秒で済む。
セミナーでは、一方的に情報を伝えるだけでなく、
司会が参加者にチャットでの意見や質問を促し、主体的に「参加」してもらう。
自社事業や商品に興味をもった方には、オンライン説明会も開催。
商品に関する「教育」をおこない、自社でどう活用できるかを考えてもらう。
最後に、商品の採用・導入について、「提案」するという具合だ。
この一連のプロセスは、「IEEOモデル」と呼ばれるマーケティングモデルだ。
インビテーション=招待、エンゲージ=参加、エデュケート=教育、オファー=提案の頭文字を取った言葉で、
オンライン営業では従来のAIDAに代わって使われている。
成約の精度を上げるには、自社商品や専門分野のコンテンツを充実させ、マーケティングオートメーションを導入する。
見込み客がどのコンテンツを見ているかを調べ、メールか電話をすれば成約率は上がる。
見込み客の集客から成約、サポートまでオンラインで行うと、
分断しがちだったマーケティングとセールスをつなぎ、全プロセスを数値で捉えられる。
見込み客に到達するのも、成約までのリードタイムも速く、低コストで競争力がつく。
商談時間や前後の移動時間も短くなり、効率的だ。
これでどう頑張ったら不況になりうるのか?
いや言葉を正そう。
今までの方法で頑張っているから、不況に陥るのだ。
例えば従来通り、時間をかけて会社や商品をオンラインで説明しても、
画面の前では集中力が限られるので、顧客に負担をかけるだけ。
短時間で顧客の必要な事項を聞き出し、適切な提案を端的に行う方が喜ばれ、生産性も上がる。
不況と思っている限り、不況に自ら進んで足を踏み入れることになる。
今、売上高を伸ばしたいのなら、古いやり方で、頑張ろうとする自分をクビにすることだ。
そして数値目標だけ与えて、若手に任せよう。
変化しようとするものにとってコロナは不況ではなく、むしろ大きな機会だ。
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