デジタル変革、次の段階へ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」20/12/13号
2020/12/22
デジタル変革の成功の鍵が、TDDX(テデックス)からBUDX(ブデックス)に変わった。
これらは私が作った略語だ。
TDDXはトップダウンDX(デジタルトランスフォーメーション)、BUDXはボトムアップDXを意味する。
2016年ごろから本格化した日本のデジタルマーケティング変革は、これまでTDDXの形で進められてきた。
変革の重要性に気づき、先駆けて取り組んだ企業の大半は、ヒト・モノ・カネの不足や、
関連部署との調整不足などの壁にぶつかったが、トップが旗を振り続けることでようやく手応えをつかみつつある。
きっかけは新型コロナだ。
マーケティングオートメーション導入で顧客のデータを自動で収集。
そのデータを連動させてAIで分析することで、
オフィスにいなくても、顧客の動きを手にとるように数値で捉えられるようになった。
私どものクライアントの例を挙げると、リード獲得、商談のアポとり、商談までをデータを駆使しながら、
オンラインで一貫して行った結果、成約にいたる効率は3~10倍に高まった。
ただしトップダウンでできることには限界がある。
そこで重要なのがボトムアップでデジタル変革を起こす「BUDX」だ。
AIを使った分析は多様なデータを集めるほど精緻になり、顧客の動きがリアルに浮かび上がる。
しかし肝心のデータの種類が少ないと、AIも宝の持ち腐れになる。
顧客の多様なデータが最も得られるのは「顧客との出会いの瞬間」、すなわち問い合わせがあった時だ。
その問い合わせに、いかに現場の人たちが真摯に向き合い、対処するか。
どんなデータを収集しなければならないかを把握し、収集した上で、きちんとそのデータを入力する。
こうした日々のボトムアップの積み重ねが、DXを推進する上で大きな鍵を握っている。
問い合わせ対応はデジタルマーケティングだけではない。
その内容をFAQとしてコンテンツ化すれば、見込み客を集めるのに役立ち、
お客様対応の業務マニュアルとしても重宝する。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により、業務の自動化を進めることも可能だ。
つまり「顧客対応は経営力強化の源泉である」との企業文化を、
トップがコミットし、ボトムが現場で取り組んでいく。
そんな企業だけが、AIを競争力強化につなげられるAIレディな企業へと発展するのだ。
TDDXからBUDXへの変化は、デジタル変革の第2幕が切って落とされたと言い換えても良い。
この変化に取り残されているのは、比較的業績の安定した成熟業界の中堅企業だ。
こうした会社の多くは昭和・平成の文化が残っていて、人間関係を大切にする一方、
いまだに「手間ひまかけてわざわざ足を運ぶこと」が多い。
上がアナログな人材ばかりなので、10年前で時間が止まっている。彼らが障害となり、
DXを推進したい若手人材が必要な経験を積めずにいる。
こうした成熟業界の会社は当面、過去の遺産でやっていけるかもしれない。
しかし、この第2幕で変われなければ、次はない。
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