なぜ餃子店が増えているのか ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/1/17号

2022/1/24

飲食店繁盛会の笠岡はじめさんが、
餃子(ギョーザ)店「龍記之餃子」を東京・池袋のナンジャタウンの餃子スタジアムに出店した。

笠岡さんは15年以上にわたり延べ1000件以上を指導してきた飲食業のコンサルタントだ。
経営者と伴走しながら既存店の売り上げを速攻で伸ばすことで定評がある。

メニューブックに手を入れるところから始め、飲食店のコンセプトをブラッシュアップして業態をより魅力的にしていく。
さらにはウェブまわりのアドバイスや通販事業の立ち上げまで行う。

その笠岡さんが自ら飲食店を始めたという。
しかも餃子店。なぜ今、餃子なのか?

飲食店を始めたのは、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しむ経営者が多い中、
店がなければできる支援が限られるからだ。

今後、人件費や原材料代の高騰も見込まれ、これまでのやり方では飲食店は経営が難しくなる。
そこで、店を開かなくても営業できる業態を自らが実験台となって開発することにしたという。

熟考の末、選んだ商材が餃子だ。
イートインもテークアウトもできる上、冷凍できるので通販もでき店外売り上げを得やすい。

餃子好きの人々も多いのでマーケットも大きい。
そのため立地を選ばず、駅前店でも郊外店でも集客が可能だ。

最終的に決め手になったのは、地域に働きがいのある雇用を提供できる点だった。

コロナ禍で職を失った人や働く時間が限られるシングルマザーなどに餃子店は広く仕事を生み出せる。
全自動で水まで入れて焼ける機械を導入すればトレーニングを積まなくても餃子をつくれるようになる。

また従業員にまかないやなじみ客との心の触れ合いなどを通じて働く安心感を提供できる点も大切だった。

これらの条件を他のメニューと比較検討すると、餃子は最も条件を満たす商材だったという。

餃子に目をつけたのは笠岡さんだけではない。
近年急速に増えているのが無人店舗だ。

冷凍庫の中に餃子が置いてあり、買った分だけお金を入れる。36個1000円程度と買いやすい値段だ。
店によっては24時間営業でいつでも購入可能。非接触で買えるので感染予防にもつながる。

大手の「餃子の雪松」は各地に店舗網を拡大、ライバル店も次々と登場している。
クリーニング店など異業種からの参入も出てきた。

また最近では店舗だけでなく、自動販売機も注目されている。

静岡で一番亭を展開するにしはらグループは、店先で冷凍餃子が24時間いつでも買える自動販売機を
テスト設置したところ、売れ行きは好調であるという。

飲食業は少子高齢化が進む中で、社会課題を解決するうえでも今後ますます重要になる業種だ。

地元の安心安全な食材、学習塾に通う子供たちへ健康的な食事、
孤立しがちな現代人たちの出会いや憩い場の提供など、地域にとってなくてはならない存在である。

地域経済における戦略的な業種であると捉え、イートイン、テークアウトの両面から、
経営を安定化できる体制を整えていくべきだろう。

 

 

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