ブロックチェーンで購買履歴管理 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」22/5/16号

2022/5/23

ブロックチェーン技術が実用段階に入りはじめた。

ブロックチェーンは、一度記録すると、データの改ざんが実質不可能となる技術だ。
もし改ざんすれば、不正がわかる。だから、噓がつけなくなるので、高い信頼が保たれる。

暗号資産の基盤技術だったことから、暗号資産の流出事件が起こると過熱状況は去ったが、
海外では第4次産業革命で必要な技術として着実に浸透してきた。

例えば、決済サービスのスクエアは社名を「ブロック」に変えた。
アクセンチュアはスマートデジタル契約の分野に進出しており、マイクロソフトは
クラウドサービス「Azure」上で、ブロックチェーン活用によるソリューション提供に力を入れている。

日本企業でも、トレードログ社が、ブロックチェーンに早くから参入。
実用化に向けて忍耐強く取り組み、それが実を結ぼうとしている。

同社は昨年から、資生堂の子会社であるザ・ギンザに、世界でも珍しい仕組みを提供している。
ブロックチェーンとRFIDタグを用いて、
プロダクトを流通させる物流からマーケティング、ブランド体験までを一気通貫でおこなう。

電波を用いて非接触で情報を読み取れるRFIDタグを化粧品の箱につけ、
工場出荷から販売までの履歴をブロックチェーンで管理する。

その効果は、物流効率化だけではない。

どんな物流プロセスをたどり、どの店舗でいくらで販売されたか、購入情報が記録されるので、
商品が偽物かどうかがすぐに分かるようになる。

つまりブランド維持ができるようになるのだ。

さらにRFIDタグをはがすとQRコードが出てくる。それをお客様が読み取れば、ユーザー登録ができる。
すると購買履歴が記録され、それに合わせて正規品証明書が提供されるようになるという。

資生堂ではこの仕組みを中国事業に導入済みだ。
こうすることで、観光客が中国に帰った後でも、日本と同じブランド体験ができるわけだ。

トレードログの藤田誠広社長によれば、このブロックチェーンの仕組みは大手だけでなく、
小さくても業界シェアの大きい会社、すなわち「スモールジャイアント」にチャンスをもたらすという。

例えば、船のエンジンのメーカーがブロックチェーン技術を導入すると、
部品調達から製造、運用、メンテナンスなどの履歴データをエンジンに関わるすべての業者と共有できる。

業界全体で共有することで、新しい付加価値が次々と生まれる可能性が出てくる。
最終的にリサイクルの過程まで追いかければ、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」も達成可能だ。

藤田社長はビジネスの原則である競争と協調のうち、ブロックチェーンは協調をもたらすと語る。
この企業間協調のリーダーにふさわしい存在がスモールジャイアントなのである。

IDCによると企業によるブロックチェーンソリューションへの支出は2022年に117億ドルに達すると予想されている。
ブロックチェーンの可能性に再び注目する時がきた。

 

 

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