女性活用の重要性 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/1/16号
2023/1/23
ある写真家の方から面白いことを聞いた。
それは、リモートの時代になってから、女性が様々なメディアに取り上げられやすくなったということだ。
オンラインで性差、年齢差を感じにくくなった結果、女性が活躍できる機会が増えてきたという。
特に企業の成長を加速するうえで、女性の高い能力が重要という調査データが増えている。
女性リーダーを活用しない企業は、もはや差別的だというレッテルを貼られかねない。
1冊の洋書を読んで、私はそのことを強く確信した。
その本は『When Women Lead』。
今までマインドの問題と思われていた男女平等や女性の能力を、定量的なデータを元に示している。
女性の能力に関する最初の画期的な調査は、マッキンゼーが2007年におこなった「Women Matter」だ。
トップマネジメント職に3人以上の女性がいる企業は、いない企業に比べて、優れた業績を上げていることが分かった。
経営陣に女性が最も多い企業は過去2年間で収益が48%増加し、株価は1.7倍上昇したのである。
11年にハーバード・ビジネス・レビューが大学生を対象に行った調査によれば、
企業が危機にひんした時に事業を引き継ぐべき候補者は、男性よりも女性が良いと答えた人が63%に達した。
これは学生が、コミュニケーションや他者を励ます能力など典型的な女性のスキルが、
危機を乗り越える上で最も重要であると信じていたためだ。
また、16年にハーバードビジネススクールのローラ・ファン教授らがMBA学生を対象に、
男女の候補者が同じ内容のピッチをして資金調達に挑むという調査を行った。
この種の調査では男性が資金調達しやすい結果が出やすいが、この調査では別の結果が出た。
社会課題の解決に直結するビジネスのピッチでは、女性も男性とまったく変わらず評価されたのである。
このように大企業でもスタートアップでも女性が活躍できることはデータでも明らかになってきている。
しかし、それでも女性は自己評価が低いとされる。
ある調査によれば、男性の63%が自分自身を非常に有能なリーダーと評価しているのに対し、
女性は49%にすぎなかった。
背景には各国の文化や育った家庭環境の違いがあるが、
女性の能力を示すデータを蓄積することで高くそびえた心理的な壁が少しずつ低くなっていくだろう。
私の母校のベンシルバニア大学ウォートン校が、
女性管理職リーダーシッププログラムを1月から日本向けにオンラインで開催する。
東京連絡事務所の代表を務める私がコーディネートを行うことになった。
ウォートンは私の入学時は生徒の9割が男性だったが、今や女性がマジョリティーだ。
ウォートンに蓄積された学術的研究がどこまで社会を変える力になるのか。
その変化を私の専門分野であるマーケティングで、どう社会的な仕組みづくりにつなげるか。
プログラムに参加し、企業の未来を担う18人の女性管理職候補者たちとしっかりと成果を出したいと考えている。
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