「WEGO」躍進の理由とは?――日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」8/7号
2017/8/14
「最近の若者は服に興味がなくなった」とアパレル関係者は嘆くけれど、
カジュアル衣料店「WEGO」の急成長をみれば、口を閉ざす。
WEGOは10代・20代に人気のカジュアルブランドで、
業界誌WWDジャパンの好きなブランドランキングで第1位に(2014年)。
10年前、45億円だった年商は、16年には350億円になった。
WEGO成長の原動力は何か?
お店を視察しても、その理由は謎だ。
他社と大きく異なるデザインの服を扱っているわけでもなければ、
値段がものすごく安いわけでもないからだ。
私の見解では、WEGOは、もはやアパレルを超えたビジネスモデル。
若者が思い切り自己表現できる一種の「メディア」だ。
そこに、成長の秘密がある。
実は、WEGOには、読者モデルをしている有名なカリスマ店員がたくさんいる。
特に有名なのは、こんどうようぢさんや古川優香さん。
こんどうさんは既に本格的なモデルとして活躍し、
古川さんもツイッターのフォロワーが22万人を超えるほど。
彼らがWEGOの洋服についてツイートすれば、
フォロワーがこぞって商品を買いに来る。
ただ、カリスマ店員がたくさんいるのは、偶然じゃない。
WEGOはレキシントンという芸能事務所を持ち、
人気店員や読者モデルのプロデュースをしている。
ソニー・ミュージックエンタテインメントと組んで、
読モが結成した音楽グループをバックアップもしている。
要するに、人気の店員からスターへの階段が自然に整えられている。
だから、WEGOというメディアで働くこと自体が自己表現になり、
店員が集まってくる。
そして、ツイッターなどで洋服のコーディネートなどの情報をどんどん発信し、
店と自分の両方をアピールするわけだ。
WEGOの商品はネットでも買えるが、お客は店に足を運ぶ。
店に行けば、店員たちと会えるからだ。
アレックス・ペントランドの「ソーシャル物理学」によれば、
リアル世界での交流を持つ友人からのメッセージは、
ネット上だけで登録した友人からのメッセージよりも、
4倍も大きな影響力があるという。
直接触れ合うことで、
お客は店員のことを等身大の先輩や友だちのように思い始める。
するとツイートに反応するだけでなく、
その店員が世に知れ渡るよう、応援するようになる。
こうして、WEGOというメディアを通じて、
店員とお客が結びついていくことに、WEGOの強さの源泉がある。
WEGOでは、渡辺直美さんや若槻千夏さんを始めとした
人気タレントのブランドをプロデュースしてきたが、
これもタレントが、デザインを通して自己表現する舞台を提供しているようなものだ。
かつて、自己表現の形は、服を着ることだったが、
今では、一歩進んで、「服を着た自分が何をするか」が重要になっている。
その変化を察知し、自己表現の舞台を提供したのが、WEGOだった。
このような「未来とのミスマッチ」は、あらゆる業界で起こっている。
それに気づかない会社が消えていくのは当然のことだ。