ダイバーシティ3.0 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/4/10号

2023/4/25

ご縁あって、米国ウォートンスクールの女性管理職リーダーシッププログラムのコーディネートに年初から関わってきた。
日本のグローバル企業幹部候補を2カ月にわたり育成したのだが、面白い発見があったのでご共有しておきたい。

企業における女性活用は、新しい段階「ダイバーシティ(多様性)3.0」へと向かいはじめているということだ。
日本企業は20年以上、ダイバーシティに取り組んできた。

採用における男女差を撤廃する「ダイバーシティ1.0」に始まり、
女性登用や働き方改革により機会も平等にしようとする「ダイバーシティ2.0」へと進んできた。

歩みを振り返ってみると、制度面の整備・改善を主眼とするトップダウンによるアプローチだった。

一定の成果はあったものの、役員の女性比率目標の数合わせのような表面的な成果を求めるだけで、
組織文化の変革にはつながっていないという反省もあった。

今回、女性リーダーたちが見いだしたのは、ボトムアップによるアプローチだった。

学んだ知見を生かすプロジェクトを構想したのだが、ほとんどはダイバーシティ自体を目的とするのではなく、
結果を出すためにダイバーシティが必然的に求められる内容だった。

具体例を3つあげよう。

1つ目は「技術メンター制度設立プロジェクト」だ。
技術が高度化し、顧客ニーズに合った提案をするには営業担当の技術面の理解が不可欠だ。

しかし技術部署との折り合いが悪く、情報提供が十分でないケースは少なくない。
考案したのが「技術メンター制度」だ。相互コミュニケーションを円滑にし、情報共有を促進する仕組みを構築する。

2つ目は「アルムナイ再雇用プロジェクト」。
参加者は特殊な技術が必要な専門職を採用するのが非常に難しいという問題に直面していた。
遠隔で支障なく業務が行える環境を整備し、リモートワークで働きたい元社員を再雇用する制度が必要だと考えた。

3つ目は子育て中の社員が親子で健康を学ぶ「免疫力向上プロジェクト」だ。
子供が健康的な生活習慣を身につけられるだけでなく、親自身も予防医療の知識を得られる。
結果、新商品開発などに生かすことも期待できる取り組みだ。

こうしたプロジェクトにおいては、ダイバーシティは単なる目標ではなく、
目的を達成するための必要条件であることが明確になっている。

こうしたアプローチを、私はダイバーシティ3.0と呼んでいる。

ダイバーシティ3.0で結果を出すには、従来の不便さを解消するための技術を積極導入する必要がある。
社内を越えて、より多様なステイクホルダーと関係性を強める必要がある。
顧客理解や市場拡大、イノベーション創出などの効果が期待される。

人工知能(AI)本格化時代に向け、日本企業が生き残るには創造的プロジェクトの量産が必須である。
経営トップが行うべきなのは、女性の変革リーダーが生み出すプロジェクトを守り、強力に支援することだ。

それがイノベーションを継続的に創出する数少ない突破口だろう。

 

 

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