2時間カクテルパーティー ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/10/9号

2023/10/16

会食の機会が減っている。
個人的な傾向かもしれないが「お飲み物は?」と勧めても「あまり飲めないので1杯だけ」となることが多くなった。

要は飲み会で胸襟をひらいて、仕事や人生の話を突っ込んでする場が激減していると感じる。
新型コロナウイルス禍の後に合った、新しいネットワーキングの方法が求められているともいえる。

社外で分野を超えた新しい出会いを得るのに面白い方法を見つけたので、紹介しよう。

「2時間カクテルパーティー」だ。
この題名の洋書があり、副題は「小さな集まりで大きな関係を築く法」。

本書によると、2時間カクテルパーティーは自宅で催す。
レストランやバーより、社会的立場や年齢を超えたフレンドリーな関係が築きやすいからだ。

「米国は自宅が広いからね……」と思うかもしれないが、
ニューヨークにある日本のマンションの一室と変わらない場でも開かれる。

詰め込んだとしても、距離感が近くなるのでかえって盛り上がるという。
人数は最大でも16人程度に抑えるのが良いそうだ。

通常、パーティーといえば金曜夜や週末だが、このパーティーは月~水曜日の開催が推奨されている。
だらだら遅くまで飲み続けることがないからだ。

パーティーでは食事とビールが定番だが、食事は乾き物だけ。
アルコールもワインしか出さない。

ビールは個々の好みが多様な上、パーティーの間にぬるくなるし、缶の処分が大変だからだ。
代わりに、たくさんの水や炭酸水を用意する。

パーティーの最中はネームシールを胸に貼ってお互いの名前を呼びやすくしたり、
主催者が参加者に短い自己紹介の機会を作ったりして、
パーティーが苦手な人にとっても居心地がいい空間を提供する。

早速、2時間パーティーを試したところ、大変うまくいった。
性別や年齢、分野を問わず、普段の仕事では絶対に会わないだろうという16人を集めて開いた。

産婦人科の女医の先生は、出産・育児・仕事の責任に悩む管理職候補の女性にアドバイスする。
若き政治家はさまざまな困りごとに耳を傾ける。

仕事とは切り離された社交の場をつくることでお金もかからず、
気楽に多様な人と信頼関係を築けることを実感した。

マーケティングの観点からいえば、
人は新しい気づきや出会いを得られた場を「自分の居場所」と感じて繰り返し訪れるようになる。

信頼できる人と出会える場を設けられる人は、ビジネスでもライフタイムバリューが高くなりやすい。

顧客リテンションや口コミ率、ブランド認知が高まるし、
内部スタッフの生産性も上がるといった数多くのベネフィットもある。

「ちょっとした交流の形ね」と素通りしがちだが、2時間カクテルパーティーは
ウィズコロナの社会における新しい交流のイノベーションと言っても過言ではないだろう。

私は2時間カクテルパーティーを四半期に一度、開こうと思っているので
いつか読者のあなたに声をかける機会があるかもしれない。

そのときにはぜひ我が家においでいただきたい。

 
 

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