アジア経済圏、女性がカギ ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」23/12/18号
2023/12/25
米国ウォートンスクールによる「日本企業向け・女性管理職リーダーシッププログラム」開催を支援している。
なぜマーケッターが女性活躍支援?と思うかもしれないが、
女性活躍支援は私が15年ほど前から取り組んできた分野である。
日本のイノベーションが遅れ、経済成長停滞の原因は多様性の欠如、
とりわけ男性中心の企業から硬直して動けなかったことにあると考えている。
同質な者同士が同じように年齢を重ねると、同じ昔の自慢話を繰り返すようなもので、未来に挑戦する意欲は衰える。
マウロ・ギーエン教授の「2030」によれば、2030年には女性の富が男性の富より多くなるという。
企業が成長するには女性ニーズを把握したマーケティングが必須だが、ビジネスの決定権者は依然男性中心。
大いなる矛盾がある。
2回目の開催となった今回は、新たに中国、韓国、シンガポールといったアジアの受講生が加わった。
そこではたと気づいたことがある。
アジア人同士が発展的に議論し、共有できる土台がないことだ。
アジアはあまりにもバラバラ。
言語的にも、平均年齢的にも、文化的にも、経済的にも、宗教的にも、そして歴史認識的にも。
だからお互いに深いコミュニケーションをどう取っていけばいいのかについて、
私たちは何も知らなかったということを気づいたのだ。
人口が非常に増えているアジアが世界経済の成長エンジンになることは明らか。
どうすれば日本企業が、アジア人同士で機能するチームを築けるのか?
その問いについて、考えるきっかけとして提示したい案が「アジア織女(おりひめ)プロジェクト」である。
織女と彦星が天の川を隔てて年に1度出会う七夕伝説は中国が起源。
東アジア文化圏特有のものといわれる。
それにあやかり、異なる環境で日常を過ごすアジアの女性たちが年1回集まって互いを尊重し、
創造的なコラボレーションを実現しようという取り組みだ。
たとえば出産を経験した女性が直面する課題は多岐に渡る。
出産に伴う不安から始まり、子供の健康管理や教育方針、仕事と家庭生活のバランス、
夫婦間のコミュニケーション、教育方針、さらには親の介護問題にまで及ぶ。
異なる文化背景を持つ女性たちが互いの経験から学び合う機会があれば、有益な機会となる。
各国の育児支援策や家庭内の労働分担の実際、免疫力を高める健康的な食事など、
異なるベストプラクティスを共有することで、
女性たちが直面する課題に対処する新たなソリューションが生まれる可能性もある。
女性たちの交流でソリューションというひとつの糸が編み込まれるうちに、
アジアの共通の糸=意図を自然に分かち合えるようになるはずだ。
七夕伝説のような共通の物語は異文化間の絆を強化し、互いの違いを理解し合うための架け橋となる。
アジア共通のアイデンティティーを構築し、イノベーションを促進するための基盤となるだろう。
日本企業のリーダーシップで、新たなアジアン・スタンダードが生まれる可能性が高まるのではと期待している。
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