消費ピーク後の成長戦略 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/3/4号

2024/3/11

16年前に監訳したハリー・S・デント・ジュニア氏の「最悪期まであと2年!次なる大恐慌」。
若干のズレはあるものの、その後の景気トレンドについての予想を的中させている。

たとえばITバブルの幕切れを示す次の株価暴落は2009年半ばから10年後半までに生じると予測していた。
リーマン・ショックが起こったのは08年9月だから、ずれは1年弱。

次に世界経済が足並みをそろえて好景気に入るのは20~36年頃。
22年後半が長期的な株式投資を行う最後の大チャンスとなるという予測もあった。
これも20年頃始まった株価上昇のトレンドを的中させている。

著者の予測の根幹にあるのは人口トレンドである。

理屈はシンプル。
人生のライフサイクル上、消費が最大化する年齢層の人口が多くなれば必然的に景気は上向く。

米国ではその年齢は46歳。
46歳人口がピークに近づくと消費を抑えられないので、景気は良くなって株価も上がる。

もちろん人口トレンドはあくまで目安。
短期の株価予測には無理があるものの、長期トレンドの予測精度は悪くない。

日本の人口トレンドにもぴったり当てはまる。

最多人口層は1947~49年生まれの団塊世代。
彼らが46歳になったのが90年代の初頭であり、まさにピークアウトと失われた30年の始まりだった。

現在、日本の株価が上がっている理由も、団塊世代の次に人口が多い71~74年生まれの団塊ジュニア世代が
消費を最大化する46歳に達したという側面もあるのではないか。

今後の大きな課題は団塊ジュニア世代の消費ピークが去った後、どのように日本の経済力を維持するか。

人口増は望めない。
22年に生まれた赤ちゃんの数は1899年の統計開始以来、初めて80万人を割り込んだ。
想定より8年も早いペースで少子化が進む。

しかし出口が見えないなかでも希望の光は残されている。
まず全世界で見ると人口が増えていて政治的に比較的安定しているアジアに日本が位置している。

次に音声入力・翻訳技術の発展により、人口が伸びているアジアで誰もが言語の壁なく活躍できるようになった点だ。

第3に22年から探究学習が導入され、教育改革が進み始めていることも大きい。
小学校の教室では他国の人とプロジェクトを実現しようと、グローバルな授業が始まっている。

最後に著者のハリー氏が予測する次の技術革命が2023~36年に表舞台に登場すること。
具体的にはナノテクやロボット、バイオテクノロジーの分野だが、日本はこれらの鍵を握る素材産業が歴史的に強い。
今もなお競争力を保っている。この分野でイノベーションが連鎖的に起きれば、日本にも可能性はある。

マーケティングが専門の私だが、マーケティングとは種を飛ばす綿毛のようなもの。
イノベーションという飛ばせる種がなければ、どんなマーケッターでも世界には飛ばせず、競争力にはつながらない。

私が産学官を巻き込むイノベーション教育、とくに探究学習の支援を強化しようと企業に提言している理由である。

 
 

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