AIに淘汰されない人材 ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/3/18号
2024/3/25
またひとつ職業がなくなった。
そう思わされた人工知能(AI)技術が、米OpenAIが発表した「SORA」だ。
なんとテキストを入力するだけで、映画やテレビCMのようなクオリティーの高いプロモーションビデオができる。
まだ実際に操作したわけではないので、最終結論は留保したいがかなりの衝撃だ。
AI動画作成サービスとしては既に「HeyGen」は全世界で使われているが、
これも既存の職業を追いやるほどのインパクトがある。
3分ほどの見本動画とテキストを入れると、自分の声と表情で説明する動画をつくれる。
営業マンが使えば、自分が商品説明するスライドができるのだ。
日本語だと言葉のイントネーションにぎこちなさがあるが、日本語で入力したテキストを英語でしゃべらせると、
ほぼ完璧に私の声でパーフェクトな翻訳をする。
自動でボディーランゲージまで入るから驚きだ。
翻訳や通訳などの仕事にも大いに影響があるだろう。
今まで花形だった人間の仕事がどんどんAIに置き換えられていくのは不安だ。
未来が見えないこの状況を乗り越えるにはどうしたらよいか。
そこで私が提案するのが「肩書やプロフィルの変更」である。
肩書とは会社・組織内の役割を示すものではなく、自分自身を定義するためのものだ。
たとえば私はマーケッターやコピーライターという肩書を持っていたが、いずれAIによって置き換えられる。
そこで、私は肩書を「経営コンサルタント&教育アントレプレナー」に変更した。
肩書を変更するとプロフィルも変わる。
取り組んだのが、静的プロフィルから動的プロフィルへと刷新することだ。
静的プロフィルとは過去の学歴や職歴、資格など「過去と現在の自己」を基盤にしたものである。
変化や将来の可能性についてはあまり言及しない。
動的プロフィルとは「現在と未来の自己」に焦点を当てたものだ。
現在の活動や将来の目標、夢、進行中のプロジェクトなど「何ができるか」「何を実現したいか」に重点を置き、
未来に向けてどう成長し貢献するのかを表現する。
自分の可能性を示すのに適した手段といえるだろう。
私の例で言うと、従来は学歴や職歴を載せていたが、
刷新後は読まない読書会「リードフォーアクション」の主宰やフューチャーマッピングのような新たな学びの方法の開発など、
教育アントレプレナーとしての活動を前面に出すようにした。
結果、過去の自分と未来の自分をつなげられた。
肩書の変更や動的プロフィルの採用で自らを再定義すれば、未来を形作る力や提供できる価値を見いだせる。
大きな変化を乗り越えるために、誰もが必要なアプローチだろう。
肩書の変更に抵抗があるなら、「兼」を使うと良い。
「コンビニ店長兼地域コミュニティリーダー」「流通企業の部長兼サステナビリティ推進担当リーダー」……。
2つ目の肩書は内的なモノでも良い。
そう考えるだけでも、変化する世界での自己の役割や貢献を予測でき、希望が湧いてくるはずだ。
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