新たな提携どう築く ― 日経MJ連載「未来にモテるマーケティング」24/4/29号
2024/5/13
ベンチャー企業の社長たちと話していると、今年に入ってから面白い傾向が目立つようになった。
「アライアンスを結びませんか?」と提案されるケースが増えているのである。
詳しく聞くと、事実上「販売代理店になって顧客を紹介してほしい」というお誘いだ。
こうした販売代理店制度は以前からあったが、最近になって目を引くのは報酬の高さだ。
かつては単なるお礼程度だったのが、現在ではあるSaaS会社から毎月継続的に30%、
あるコンサルティング会社からは40%という報酬を提示された。
背景には、ネット広告の効果が低下しROI(投資収益率)が合わなくなってきた事情がある。
顧客を獲得するには、引き続き広告に投入しつつも
提携パートナーへの報酬を手厚くすることが効果的という判断だ。
こうした販売提携に対する需要は、提案するベンチャー企業側だけでなく、提案される側も高まっている。
ベンチャー企業の社長が講師を務める中小企業経営者向けの勉強会を開催すると、
質疑応答の時間に「代理店制度はありますか?」という質問がよく見られるようになった。
中小企業もまた、自社製品やサービスと相乗効果がある成長パスを求め始めている。
米国ではパートナーシップ戦略が極めて重要とされる。
David A. Yovanno著「The Partnership Economy」では平均販売パートナー数が173にもなると述べている。
ただパートナーを増やせば成功するわけではなく、
パートナー自らが販売しているイメージを持ってもらうことが重要だ。
そこで実施されているのが巻き込み型のミニインターンシップ。
特定の業務やスキルを短期集中で学ぶ、実践的なトレーニングプログラムだ。
私は「大人向けのキッザニア」と呼んでいる。
キッザニアで子供が仕事を模擬体験して楽しく職業を学ぶように、
ミニインターンでは大人が実際の業務シナリオを模擬体験することで、効果的にスキルを習得する。
たとえば健康アプリのプロモーションの場合、参加者が顧客役の俳優を迎えてデモンストレーションを行う。
アプリの特徴や日常生活での役立て方を説明し、顧客の疑問に答えることで、実務に即した対応力を養う。
また電動自転車レンタル事業なら、過疎化が進む地方自治体のニーズに応じた提案を作成する。
理想的な設置場所を特定するために地域分析を行い、自治体の担当者役との会議でプロジェクトの可能性を議論する。
これらによって、参加者は新たなビジネス機会を活用する準備ができるし、
企業も新たなパートナーに短期間で知識を伝達し、戦力化できるわけだ。
多くの業界で既存のビジネスモデルが刷新される中、成長が大いに期待される
「未来にモテるビジネスモデル」を持つ企業にとってはビジネスをスケールする絶好のチャンスだ。
そのうえで、新たなパートナーシップを築くのは非常に有効だ。
ただし、販売提携の誘いだけでは不十分。
リソースが限られた企業や多様な働き方を選択する個人を巻き込むには、ミニインターンが鍵となる。
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